Nikkei Online, 2021年5月8日 5:08更新
政府は7日、11日までの新型コロナウイルスの緊急事態宣言を31日まで延ばすと決めた。発令中の東京、大阪、京都、兵庫に12日から愛知、福岡を加え、対象を6都府県に広げる。百貨店など大型商業施設への休業要請をやめて午後8時までの営業を容認する姿勢に転じたが、東京都などは休業要請を継続する。
首相官邸で開いた新型コロナ対策本部で決定した。菅義偉首相は対策本部で「新規感染者数は大都市部を中心に高い水準にあり、病床の逼迫が続いている」と説明した。「大型連休が終わり、高い効果の見込まれる措置を徹底する」と述べた。
大型商業施設への協力金については「事業規模に応じたものとする」と表明した。休業した施設の面積1千平方メートルごとに1日20万円を支給する。テナントには100平方メートルごとに同2万円を出す。宣言が始まった4月25日に遡って適用する。
首相は本部の後の記者会見で「変異ウイルスへの警戒を強化し、引き続き対策が必要だと判断した」と語った。延長により「引き続き負担をかける皆様に深くおわび申し上げる」と陳謝した。
宣言に準じた対策をとる「まん延防止等重点措置」も31日まで延長し、地域を拡大する。重点措置を適用している埼玉、千葉、神奈川、愛媛、沖縄の5県に9日から北海道と岐阜、三重両県を追加する。宮城県は12日から外す。
3度目となる宣言は4月25日から5月11日まで大型連休を挟んだ17日間の予定だった。首相は当初「短期間で集中して実施する」と語っていた。繁華街などの人出は減ったものの、感染状況は好転しなかった。
宣言の延長に伴い政府の感染防止策を変更する。休業を要請している百貨店やショッピングセンター、映画館など延べ床面積が1千平方メートル超の大型商業施設は午後8時まで時短営業を認める。
日本百貨店協会(東京・中央)は6日、12日以降の営業再開を認めるよう求める要望書を政府に提出していた。政府は大型連休が終わった点などを考慮し、再開を認める方針に改めた。
対象地域の知事の判断で休業要請を継続するのも可能だ。要請に従った事業者には時短・休業協力金を支給する。
東京都と大阪府は延長後も大型商業施設に引き続き休業を要請する。京都府と兵庫県は休業要請を土日に限り、平日は午後7時までの時短営業を求める。
東京都の小池百合子知事は大型商業施設の休業要請について「負担が大きいことは承知しているが、人流抑制に大きな役目を果たしている」と述べた。
大阪府の吉村洋文知事は府庁内で記者団に「いまコロナに感染しても適切な治療を受けられない可能性がある。宣言の中身は緩和せず、31日までの協力をお願いしたい」と語った。
スポーツやコンサートなどの大規模イベントの入場制限も緩和する。無観客の方針を変更し、5千人か定員の50%のいずれか少ない方を上限に入場を認める。午後9時までの時短を求める。大阪府はこれまでと同様に無観客とする。
感染リスクが高い飲食店への対策は強化する。酒類とカラオケを提供する飲食店への休業要請を続け、酒類の店内持ち込みも禁じる。酒類を提供しない飲食店は午後8時まで営業できる。
公園や路上などで集団で飲酒する事例が増えているため、特別措置法に基づき自粛を促す。
31日の期限までに新規感染者数を減らして病床逼迫を防ぐ狙いで、不要不急の外出を控えるよう呼びかける。
大型連休後に再び通勤者が増える事態を想定し、テレワークや休暇取得を推進して出勤者の7割削減を企業に促す。経済団体に企業のテレワークの実施状況を公表するよう協力を求める。
医療機関や高齢者施設でのクラスター(感染者集団)の発生を防ぐ狙いで、検査を増やす。施設で働く人の感染を早期に把握できるように、800万個の抗原検査の簡易キットを配布する。
現在の緊急事態宣言は2020年4月、21年1月に続き3回目になる。いずれも延長した。