Nikkei Online, 2021年5月25日 8:48更新
【ワシントン=鳳山太成】米国務省は24日、日本の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、米国民に日本への渡航を中止するよう勧告した。東京五輪・パラリンピックの開催予定日が2カ月後に迫るなか、渡航の警戒レベルを4段階のうち最高に引き上げた。
米疾病対策センター(CDC)が日本の感染状況を4段階のうち最高の「非常に高い」としたことを踏まえて判断した。CDCは「コロナワクチンの接種を終えた旅行者でも変異株に感染し、広めるリスクがある」と指摘し、あらゆる渡航をやめるべきだと警告した。
渡航中止勧告に法的拘束力はなく、米国から日本への渡航自体は引き続き可能だ。CDCは、日本を訪れなければいけない場合は「渡航前にワクチン接種を完了する」よう求めた。
米国オリンピック・パラリンピック委員会は24日「(東京五輪に)安全に参加できると確信している」との声明を出した。米ブルームバーグ通信は国務省の決定に関して「五輪を開催できると国内外を納得させようと苦労している国にとって新たな打撃だ」と伝えた。
国務省は2020年8月、新型コロナの感染拡大で全世界一律で出していた渡航中止勧告を改め、国・地域別に渡航の警戒レベルを4段階で示した。現在、大半の欧州諸国など約150カ国・地域を対象にレベル4の渡航中止を勧告している。レベル2(注意)は韓国など16カ国、レベル3(渡航再検討)は英国や中国、イスラエル、オーストラリアなど約40カ国。これまで日本はレベル3だった。
日本政府はコロナの感染が広がるなか、東京都などに出している緊急事態宣言の延長を検討している。日本はワクチンの接種が他の先進国と比べても大幅に遅れており、感染状況や医療体制の改善が進んでいない。
バイデン政権は4月に開いた日米首脳会談の共同声明で「開催するための首相の努力を支持する」と明記した。