Nikkei Online, 2021年7月2日 5:00
新型コロナウイルスのワクチン接種の予約を停止する動きが関西の自治体で相次いでいる。国の米ファイザー製ワクチンの供給量が減っているためで、必要量の5割にも満たないケースもある。供給減が長引けば、今後本格化する64歳以下の接種計画の見直しを迫られる可能性もあり、自治体から困惑の声が上がっている。
大阪市の松井一郎市長は1日の記者会見で、国によるファイザー製ワクチンの供給量が不足しているとして、個別、集団接種の予約を2回目の接種者に限定する方針を表明した。1回目の接種予約を再開する時期は未定とした。松井氏は「ファイザー製ワクチンは3週間後に2度目を打たないと効果が薄れてしまう。確実に供給されるワクチン量に応じた接種体制に見直したい」と述べた。
これに先立ち大阪市は、個別接種を実施する約1700の医療機関に7月5日以降のワクチンの配送量を1割以上減らすと通知した。市によると、ファイザー製の供給量は、6月21日~7月4日の2週間が約37万回分だったが、5~18日の2週間は約18万回分と半減した。市は2回目の接種を優先し、希望する65歳以上の高齢者の接種を7月中に終える目標を維持したい考えだ。
ファイザー製ワクチンは主に市区町村が実施する個別接種や集団接種で使われる。厚生労働省によると、7月5~18日分として大阪府内に届く同社製ワクチンは724箱(1箱約1170回分)で前の2週から3割減少し、配分数を自治体の希望数量で割った「充足率」は55%と同じ期間で20ポイントほど下回った。国は同社製ワクチンの7~9月の輸入量が4~6月と比べて減少する見通しを示していた。
大阪府の担当者は「国は自治体への供給量を一方的に示すだけで、なぜ減るのか詳細な説明がない」と話す。
兵庫県明石市は7月5日に始めるとしていた50代の個別、集団接種の予約受け付けを延期した。7月前半に配送予定のワクチンが必要量の半分にも満たない約2万6000回分にとどまる見通しとなったためだ。同県丹波市も64歳以下の個別、集団接種の予約受け付けを中止すると6月29日に発表した。
京都市は来週から、個別接種を実施している市内の医療機関に配送する1週間分のワクチンの上限を、現在の300回分から120回分に制限する方針だ。市の専用サイトでは予約が取りにくい状況となっている。
「接種完了が11月にずれ込む可能性がある」と危機感を募らせるのは堺市の永藤英機市長だ。市は10月末までに希望する12歳以上の市民全員への接種完了を目指しているが、8月以降のファイザー製の供給量が国から示されていないという。永藤氏は「基礎疾患のない39歳以下の市民への接種の予定を立てることができない」と説明する。
大阪府は11月末までに希望する府民全員に接種する計画を掲げている。吉村洋文知事は1日、府庁内で記者団に対し、緊急事態宣言が出された自治体を中心にワクチンを重点配分すべきだと主張し、2日に政府に要請する意向を明らかにした。
2021年7月3日 14:34更新
新型コロナウイルスのワクチン予約を停止する動きが各地の自治体に広がっている。米ファイザー製ワクチンの供給が細り、希望量を確保できないことが判明し、不足懸念が高まった。接種計画の見直しを迫られる可能性もあり、困惑の声が上がる。
千葉市は2日、個別・集団接種のすべての会場の新規予約を一時停止すると発表した。ワクチンの配分計画が見通せないことが理由という。担当者は「政府から早期の接種完了を求められ、ワクチン供給があると思って努力してきたのに残念。市民のためにも早く供給してもらいたい」と話す。
神戸市は大規模会場などで6日以降の1回目の接種予約をすべて取り消す。5日以降に予定していた59歳以下の予約の受け付け開始も延期する。19日以降の供給量が、希望量の2割程度にとどまる。大阪市も1回目の接種を12日から一時休止し、2回目を予定している市民に限定する。山口県長門市や三重県四日市市も予約を止める。
国はファイザー製を6月末までに1億回分確保したが、7~9月分は7000万回分に減る。国から自治体への供給も7月2日までは2週間ごとに計約1870万回分だったが、5日からは1280万回分ほどに減る。自治体側の希望量は増え、供給の3倍に達する状況になっている。
これまでの接種回数は4400万回分ほどで、残り5000万回分超が自治体で在庫として残る。政府は「全体ではワクチン量は足りている」と説明する。ただ在庫量には自治体間で偏りがあるといい、一部でワクチンが不足する懸念が高まった。
自治体は1人あたり2回分のワクチンをセットで押さえ、足元の必要量よりも在庫を多く確保しようとする面もある。64歳以下への接種を前倒しする動きもあり、需給が逼迫した。