Nikkei Online, 2021年7月8日 17:19
政府は8日、東京都を対象に新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を発令すると決めた。沖縄県への宣言と埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県で適用する「まん延防止等重点措置」は延長する。いずれも8月22日までで都への宣言発令は4度目。7月23日に開幕する東京五輪やお盆休みの期間の人の流れを抑え、全国への感染拡大を防ぐ。
感染リスクが高い飲食店での酒類提供は対策を強化する。現在は重点措置地域でも一定の条件下で午後7時まで認めている。12日以降、宣言地域では休業を含め提供の一律停止を要請する。重点措置でも原則停止とし、知事の判断で午後7時までの提供可能とした。
首相官邸で8日に開いた政府の新型コロナ対策本部で決定した。菅義偉首相は8日夜に記者会見し、都への宣言再発令に至った理由を説明する。
政府は宣言の期限まで1カ月半ほどと発令時として最も長くとった。夏にかけて人流が増える行事が続くことに備えるためだ。8日に改定した基本的対処方針でも「不要不急の帰省や旅行など都道府県間の移動を極力控える」よう促した。
その間にワクチンの接種を急いで感染を抑制し、期限通り解除できるようにする。
現在、重点措置を適用している地域のうち北海道、愛知、京都、兵庫、福岡の5道府県は11日の期限をもって解除する。
宣言や重点措置地域の飲食店には引き続き午後8時まで営業時間の短縮を要請する。宣言地域では新型コロナ対策の特別措置法に基づいて休業も要請・命令できる。命令に従わない店には30万円以下の過料を科せる。
要請に協力してもらう店舗を増やすため、政府の基本的対処方針に「協力金の先渡しが可能となる仕組みの導入」を明記した。地域によって支給が遅れていることへの不満を解消し、協力要請の実効性を高める。
西村康稔経済財政・再生相は8日の基本的対処方針分科会で、酒類を販売する事業者に「休業要請に応じない飲食店と取引しないよう要請したい」と語った。すでに過料を科された店舗にも「要請に応じなければ何度でも手続きをとることも含め、厳しく対応する」と強調した。
宣言地域の大型商業施設については午後8時までの時短を求める。休業要請も可能となる。大規模なイベントは収容人数の上限を5千人かつ定員の50%以内とした。
各地域での具体的な対策はこうした政府の基本方針に基づき、各知事が独自に判断する。
なかでも重点措置地域で知事の裁量は大きい。酒類提供を午後7時まで認めるかや、大型商業施設やイベント開催の時間短縮といった要請の是非は知事が決める。
首相が感染対策の切り札と位置づけるワクチン接種は1日100万回を上回るペースで進み、累計回数は6日時点で5千万回を超えた。基本的対処方針では接種が進んで医療の提供体制が改善した場合、宣言や重点措置を「期間内であっても解除する」と明記した。