Nikkei Online, 2021年11月29日 19:56更新
政府は29日、新型コロナウイルスの水際対策を巡り全世界からの外国人の新規入国を原則停止すると発表した。新たな変異型「オミクロン型」の世界での急拡大に備える。30日午前0時から適用し当面1カ月間は継続する。帰国するすべての日本人にはワクチン接種者を含め14日間の自宅などでの待機を求める。
外国人の新規入国の原則停止に伴い入国できるのは日本人と再入国する一部の外国人となる。1日あたりの入国者数の上限は11月26日に5000人に引き上げていたが、12月1日から再び3500人に戻す。
ワクチン接種を条件に待機期間を最短3日間に縮める措置も止める。オミクロン型対策として入国後に指定施設での待機を求める対象にアンゴラやドイツなど14カ国・地域を加える。これまでは南アフリカなど9カ国だった。
政府は2021年1月以降、特段の事情を除き外国人の新規入国を原則認めてこなかった。今月8日にビジネス目的の滞在客や留学生らの新規入国について条件を緩和して容認したばかりだった。
世界でのオミクロン型の感染拡大を踏まえ、水際対策の方針を緩和から引き締めに転じる。オミクロン型の感染力の強さが定かでないといったリスクへの対処を優先した。海外で感染状況が落ち着かなければ今回の措置を延長する可能性はある。
岸田文雄首相は29日、首相官邸で記者団に「最悪の事態を避けるための緊急避難的な予防措置だ」と強調した。「まだ状況が分からないのに慎重すぎるという批判は私がすべて負う覚悟だ」とも述べた。
入国後の待機措置に関し、オミクロン型の拡大のおそれがある国・地域から入国する人には検疫所などが確保した施設での3~10日間の待機を求める。
期間はアンゴラからの入国は10日間、イスラエルや英国、オランダ、イタリアなら6日間、オーストラリアやドイツ、フランス、チェコ、香港など9カ国・地域なら3日間とする。アンゴラは30日から、それ以外は12月1日から適用する。
首相は南アフリカでオミクロン型が確認されたと報告を受けた11月26日のうちに水際対策の強化を指示していた。9月の自民党総裁選のときも「安易な楽観論に陥ることなく臨機応変な対応が必要だ」と主張していた。
海外ではオミクロン型の広がりを受けて水際対策の強化が相次ぐ。
イスラエルは全外国人の入国禁止を決めた。米欧各国は南アフリカなど一部の国からの入国制限を打ち出す。全世界を対象とした日本の強化策は主要7カ国(G7)で最も厳しい部類に入る。
国際社会ではワクチンの接種証明を活用して水際対策を緩和するのが潮流になっていた。日本は水際対策の緩和が遅れていた事情もあり、もともと各国に比べて新規入国の制限は厳しかった。
8日に実施した新規入国の緩和はかねて経団連や大学などから要望が強かった。海外出張が難しく商談の障壁となるとの声があった。企業の技能実習生や大学の留学生の受け入れにも支障が出ていた。