オミクロン型、30カ国・地域に拡散 懸念指定から1週間

Nikkei Online, 2021年12月4日 5:34更新

世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの「オミクロン型」について、警戒レベルの高い「懸念される変異型(VOC)」に指定して3日で1週間がたった。感染確認は30カ国・地域を超えた。当初はアフリカ南部への渡航歴のある人の感染例が相次いだが、直近では市中感染や感染経路が不明なケースも増えてきた。特性の解明に至らない中、各国は水際対策だけではなく、ワクチンの接種義務化などの対策を進めている。

米国ではハワイやミネソタ、カリフォルニアなどでオミクロン型の感染者が確認された。ミネソタで確認された感染者は直近でニューヨーク市を訪れ、大型イベントに参加していたことが判明している。

ニューヨーク市のデブラシオ市長は2日の声明で「我々は市内で感染が広がっていると考えるべきだ」と危機感を示した。ハワイの保健当局も海外渡航歴のない人物の感染を確認したとし「市中感染だ」との認識を示した。

欧州ではノルウェーの首都オスロでクリスマスパーティーに参加していた50人が新型コロナに感染し、そのうち1人がオミクロン型であることが分かっている。同型のクラスターになる可能性がある。

オミクロン型の感染はすでにほぼ世界中に広がっている。なかでもアフリカとの人的・経済的な関連が深い欧州で感染者数が増えている。欧州連合(EU)と英国を合わせて既に100件を超える規模となっている。

各国・地域保健当局はオミクロン型の分析を急いでいる。欧州疫病予防管理センター(ECDC)は2日、南アフリカからの初期データに基づくモデル分析で、数カ月後にEU内の新型コロナ感染者の半数超がオミクロン型になるとの見解を示した。

南アの国立感染症研究所によると、11月の感染例の74%をオミクロン型が占めた。10月はデルタ型が92%で、急速にオミクロン型に置き換わったことが分かっている。

オミクロン型の感染が拡大が深刻な南アでは 2日、新たに約1万1500人の感染が確認された。1週間前から4.7倍増えた。南アは6~8月ごろ、デルタ型が主流となり「第3波」を経験したが、11月中旬には200~300人程度まで減少していた。

同研究所のアン・フォン・ゴットバーグ教授は2日、オミクロン型の感染力について、ウイルスの性質を理由として「デルタ型と同等か、デルタ型よりわずかに低い」可能性を指摘した。それでも感染が急拡大する理由について、オミクロン型がワクチンや過去の感染でできた免疫をすり抜ける特性があることが考えられるという。

同研究所などは2日、過去にコロナに感染し、回復した人がオミクロン型に再感染するリスクはベータ型、デルタ型と比べ3倍高いとする暫定の研究結果も発表した。

ECDCはウイルス表面の突起部「スパイクたんぱく質」に多数の変異が存在することを理由に「感染やワクチンによって獲得した抗体の(防御力を示す)『中和活性』が弱まっている可能性がかなり高い」と指摘した。

オミクロン型は毒性について不明な点が多い。感染が集中している南アのハウテン州ツワネでは、2日時点で人工呼吸器を必要とする患者は全国で106人と、全感染者に占める割合は 0.2%にとどまる。

WHOは 1日、オミクロン型の感染力などのついての情報が「数日内に」得られる可能性があると発表している。各国の水際対策などの立案に寄与するとの期待が出ている。

(イスタンブール=木寺もも子、ロンドン=佐竹実)

 

<< Return to Top