Nikkei Online, 2022年1月14日 22:17更新
国内では14日、新型コロナウイルスの感染者が午後7時時点で新たに2万2045人確認された。感染者の累計は183万3584人、死者は11人増えて計1万8424人となった。密閉、密集、密接の「3密」回避など、一人ひとりの感染防止の取り組みが求められる。
Nikkei Online, 2022年1月15日 5:10更新
新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の急拡大に企業の警戒感が高まっている。マツダなどが会食の禁止を決め、JR東日本は事務職でも乗務資格のある社員が車両の運行に復帰できる教育をしている。オミクロン型の猛威が広がるなか、事業の停止を回避できるか企業の焦りが強まる。
製造業では工場などが停止するリスクを踏まえて会食を禁止する企業が相次ぐ。
マツダは9~31日を感染防止の集中対策期間とし、会食やイベントを禁止にした。ワクチン接種の確認を条件に5人以上の会食も認めていたが、変異型の拡大で警戒レベルを一気に引き上げた。自動車大手の幹部は「クラスター(感染者集団)が起きたら工場が止まる。コロナで昨年から減産しており、さらに商機を失う」と懸念する。
ダイキン工業も7日から会食を原則禁止にした。昨年10月から会食に人数などの制限を設けてこなかったが、竹中直文専務執行役員は「変異型が急拡大したためスピード重視で厳しい対応にした」と語る。家電大手の幹部は「コロナによる部品不足も完全に収束していない。欠勤者が相次いで工場が止まったら今期には業績を取り返せない」と警戒する。
オミクロン型は無症状や軽症の感染者が多いとされる。沖縄県のデータでは、4日時点の療養者のうち無症状や軽症は92%を占めた。2021年に流行したアルファ型より約20%多い。感染者1人について4~5人程度の濃厚接触者がいるとされる。無症状が多いと濃厚接触者が増え、工場などで集団感染が起きて稼働が止まりかねない。
介護施設や鉄道などは代替人員の確保に向けた対策を急ぐ。175カ所の介護施設を運営する学研ホールディングス(HD)傘下の学研ココファンは近隣の施設から応援に入れる職員をリスト化し、欠勤者が出ても対応できるようにしている。
介護施設は慢性的な人手不足に悩む。現場での人繰りがすでに限界にきている企業も多く、少人数の欠勤でも運営に支障が出かねない。都内の介護施設の経営者は「そもそも人手不足で現場をギリギリで回している。人員融通なんて不可能だ」と憤る。
オミクロン型がまん延する米国ではパイロットらの不足から航空便の遅延や欠航が相次ぐ。米ユナイテッド航空は約3000人の従業員が感染し減便を始めた。日本でも21年夏、都心の商業施設が感染の急増で臨時休業に追い込まれた。
JR東日本は欠勤者が出ても乗務員を補充しやすい体制を整える。同一線区内であれば乗務員の所属拠点にかかわらず運転できるようにしている。事務職でも乗務資格のある社員が緊急時は車両の運行に復帰できる教育も実施している。
感染症対策に的を絞った事業継続計画(BCP)は09年のインフルエンザ流行を受けて国が企業向けなどに指針を公表した。従業員が最大40%欠勤した場合を想定して BCPをつくるように促したが、コロナでは機能していない企業も多い。
東武鉄道は「オミクロン型の感染状況を鑑み、必要があれば BCPの更新を検討する」と見直しも視野に入れる。 関西電力も国が定める原子力発電所の稼働に必要な最低人員数(拠点ごとに40~60人以上)を他拠点から応援で補充する仕組みを持つが、「新たな知見が得られれば随時変更する」とする。
個社でBCPが機能しても部品などのサプライチェーン(供給網)のどこかで支障が出れば、事業活動は止まる。
みずほリサーチ&テクノロジーズの調査によると、従業員100人以下の中小のBCP策定率は大企業の半分の4割にとどまる。中小は大企業の下請けが多く在宅勤務ができない工場での作業なども多い。
SOMPOリスクマネジメントの石井和尋氏は「多くの企業では現状のBCPで対策できる『特効薬』があまりない状況だ」と危機感を示す。マスクなしの会話禁止など企業にこれまで以上に厳しい感染対策の徹底と、欠勤率40%など最悪を想定したBCPの再点検・再構築を促す。