コロナ感染、過半の国で減少 追加接種の進展で明暗

Nikkei Online, 2022年2月5日 5:41更新

新型コロナウイルスの感染者数が世界で峠を越えつつある。新規感染者は2カ月ぶりに過半の国・地域で前の週より減った。欧米で変異型「オミクロン型」の感染が急減したためだが、日本を含むアジアや中東はなお増加する。明暗をわけた一因とみられるのがワクチンの追加接種の進展だ。

米ジョンズ・ホプキンス大のデータを日本経済新聞が分析した。新規感染者が1週間前より増えた国・地域は、1月31日時点で94となり、減った国・地域(111)を下回った。デルタ型の感染拡大が一服した2021年8月も「増加国」が「減少国」を下回ったが、オミクロン型の流行で21年12月に逆転していた。

英国は足元で1日の感染者数が10万人程度と1月上旬のピーク時の半分以下だ。人口の大半を占めるイングランド地方では1月27日から屋内のマスク着用義務を撤廃した。イベント参加時のワクチン証明提示義務もなくなり、3月には感染者の隔離措置すらなくす。

米国でも1月上旬をピークに新規感染者は減少傾向。東海岸各州で新規感染が急速に減り、国全体の数を押し下げた。フランスやスペインもすでに減少に転じた。

対照的に日本は新規感染者が10万人を超えてなお増える。イラクは1月上旬まで数百人だったが、足元は8千人前後まで急増した。ロシアも新規感染者数が2日に14万人を突破し、1カ月間で約8倍に膨らんだ。

オミクロン型の初確認から感染ピークアウトまでの期間とワクチンの追加接種率を分析したところ、追加接種率が56%と最高水準の英国はわずか38日間でピークアウトした。45%のフィンランドは37日間、48%のフランスは51日間でそれぞれピークアウトした。

一方、日本の追加接種率は5%と先進国で最低水準。オミクロン型の初確認から66日間たつがピークアウトしていない。 7%のロシアも約60日が経過してもまだピークに達しない。 イラクもワクチン接種を終えた人の比率が15%にとどまる。

イスラエルやシンガポールのように追加接種率が5割超でもピークアウトまで時間がかかる国もあり、追加接種率だけですべてを説明できない。 ただ、イスラエルの直近の死亡率は0.15%と低く、シンガポールも感染者の99%超が無症状あるいは軽症という。

オミクロン型は感染力が極めて強い半面、重症化しにくい。世界全体の新型コロナによる死亡率は足元で0.3%と、デルタ型が流行した昨年6~8月の2%前後より大幅に低い。オミクロン型の死亡率はむしろ季節性インフルエンザ(0.1%程度)に近い。

油断は禁物だ。米国では1日あたり死者数(7日移動平均)は約2400人とデルタ型の流行期を上回る。ワクチン未接種者が感染し、重症化している。米国の接種完了率は6割強と主要7カ国(G7)で最も低い。

オミクロン型の派生型「BA.2」も気がかりだ。感染リスクは通常のオミクロン型の2倍以上ともされる。BA.2が拡大するデンマークの新規感染者は減少に転じたものの高止まりする。ほかの国にも広がれば、新規感染者の減少ペースが鈍る恐れがある。

(竹内弘文、武田健太郎、宗像藍子)

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