Nikkei Online, 2022年2月19日 5:22更新
新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置が一部地域で解除されることになり、第6波の出口を探る動きが始まった。国内の新規感染はピークを越えつつあるが、減少率は海外に比べて鈍い。検査や医療提供の体制にも不安が残る。感染拡大収束へ改善すべき課題は山積している。
「新規陽性者は減少傾向にあるが、依然として高い水準だ」。東京都が17日開いた感染状況のモニタリング会議で、小池百合子知事はそう強調した。
都内の新規感染者は9日以降、前週を下回る日が続く。重点措置が解除される沖縄県や山口県も感染拡大のピークを過ぎた。
全国的には増加ペースに頭打ち感が出ているが、早期収束につながるかどうか懸念材料も多い。第1の懸念は感染者の減少ペースの鈍さだ。
7日間平均の新規感染者数をみると、東京都は8日にピークを迎えた後の7日間で18%減にとどまった。米ニューヨーク市のマンハッタン地区はピーク後7日間で52%減、南アフリカの最大都市ヨハネスブルクがあるハウテン州では7割減だった。
国内外で減少ペースが異なる要因の一つとみられるのがワクチンの3回目接種率だ。米国は全人口の3割近くに達したのに対し、日本は1割強にとどまる。抗体の値が回復した人口の割合が低く、感染収束を遅らせるおそれがある。
PCR検査での陽性率の高さも第6波収束への懸念材料となる。厚生労働省によると全国の陽性率は13日までの1週間で63.2%と、第5波ピーク時の3倍以上となった。変異ウイルス「オミクロン型」の影響で感染者が急増し、検査を絞り込む自治体が相次ぐ。
足元の陽性率が70%近い千葉県の担当者は「無症状者まで追えるのが望ましいが、患者数を考えると対応しきれない」と話す。17日の都モニタリング会議では「無症状や軽症で検査を受けていない感染者が多数潜在している可能性がある」との指摘が出た。
感染者の急増で検査機関からの報告が遅れ、陽性率の分母である検査件数の正確さも低下している。医師が検査なしで陽性と診断する「みなし陽性」も含め、実態が見えにくくなっている。
検査に必要な試薬の不足に悩む病院や診療所も少なくない。試薬や抗原検査キットの増産をはじめ、検査体制の立て直しが求められる。
3つ目の懸念は自宅療養者のケアなど医療体制の穴だ。厚労省によると全国の自宅療養者は16日時点で57万人を超え、第5波の4倍にのぼる。
多くの自宅療養者を抱える自治体は健康観察の対象を高齢者らに絞っているが、体調急変時の入院調整など緊急対応が円滑に進むかどうか不安を残す。
感染が疑われる人を診察する「発熱外来」へのアクセス改善も進まない。都内に4198カ所ある発熱外来のうち、ネットで名前を公表しているのは8日時点で2212カ所と半数程度。都は公表に協力するよう約1000カ所に呼びかけたが、追加できたのは16日時点で46カ所だった。
大阪府も公表している割合は5割程度にとどまる。府の担当者は「地元の医師会を通じて引き続き協力を依頼しているが、公表すれば患者が殺到すると懸念する医療機関が多い」と説明する。
岸田文雄首相は17日に日本医師会の中川俊男会長らと面会し、名前の公表への協力を要請した。住民が必要とする医療サービスを確実に提供できる体制づくりが、第6波収束への重要なカギとなる。