病院ベッド(病床)の過剰感が強まっている。日本経済新聞が都道府県の医療計画を調べたところ、必要数を上回る病床は2018年度に計21万1千床と、13年度比で14%増えていた。超過割合は2割台に乗った。人口減で不要になった高額な重症者向けの削減や、高齢化に適したリハビリ用への転換が進まない。実際の需要に合った適正な病床数にしないと医療費は一段と膨らむ。
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国民医療費42兆円のうち入院医療費は約4割。ベッドが余ると患者を入院させる動機が働きやすく、ムダな医療需要を生むとの指摘が多い。このため都道府県は6年おきに作る医療計画で、住民の年齢構成や入退院実績などから需要に即した必要数(基準ベッド数)を示している。
日経新聞は必要数に対する実際の病床数の超過割合を「病床過剰率」として算出した。18年度の実際の国内病床数は122万8千床。過剰率は21%と13年度比3ポイント上昇した。入院需要が落ち込み必要数が3%減る一方、実際の減少幅が1%にとどまったからだ。過剰病床は13年度の18万5千床から2万6千床積み上がった。過剰率が5%弱だった20年前から増え続けている。
自治体別では宮城、埼玉、兵庫を除く44都道府県が過剰で、うち半分で過剰分が増えた。北海道、大阪、福岡は3割以上膨らんだ。
都道府県は過剰地域の増床を制限できるが、すでに存在する病床の削減は強制できない。
千葉県はひとつ前の計画途中で、必要なベッド数を下方修正した。銚子市など北東部は過剰と判断されたが、域内の病院が駆け込みで100床増やした。この地域は約1千床も過剰だ。
都道府県別の病床過剰率を算出すると、過剰率が高いほど医療費も高かった。首位の高知は直近の入院患者の平均入院日数が21日と最長。地域の年齢構成の違いを平準化した1人あたり医療費は2位だった。過剰率2、3位の山口、北海道も医療費がかさんでいる。