75歳以上の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法案が11日の衆院本会議で与党などの賛成多数で可決した。一定の年収のある370万人が対象となる。現役世代の負担軽減に向けた一歩となるが、高齢化で膨らむ医療費の負担見直しを巡っては課題はなお多い。
法案は参院審議を経て、今国会で成立する公算が大きくなった。2割負担の対象となる所得の基準は、単身世帯が年金を含めた年収200万円以上、複数人の世帯は75歳以上の後期高齢者の年収が合計320万円以上だ。これにより75歳以上の人の2割が対象になる。
適用開始は2022年10月から23年3月の間で、成立後に政令で定める。急激な負担増を防ぐため、適用開始から3年間は外来受診の際の負担増加額を月3000円までにする経過措置を取る。
75歳以上の後期高齢者は現在、基本的には医療費の窓口負担は1割だ。単身世帯で383万円、複数世帯で520万円以上と、現役並みの所得がある場合には3割を負担しているが、全体に占める割合は約7%と少ない。
働き手を中心とした現役世代は3割を負担している。75歳以上の一部を2割に引き上げてもなお水準は低い。政府は世代間の偏りを見直そうと全世代型社会保障改革を進めている。20年12月にまとめた改革の方針では、今後増えると見込まれる現役世代の医療費負担を巡り、その上昇幅を抑える方向性を示した。
ただ、今回の見直しでも現役世代の負担の減少は小幅にとどまる。具体的には22年度で1人あたり年700円、25年度で800円にとどまる。後期高齢者の医療費約18兆円は患者が窓口で払う自己負担分を除く費用のうち、現役世代の健康保険料からの拠出金が4割を占め、現役世代の負担が重い状況は変わらない。
22年度以降は団塊世代が後期高齢者になり始め、医療費の増大が避けられない。ニッセイ基礎研究所の三原岳主任研究員は「低所得の人を支える仕組みは当然考慮すべきだが、将来は年齢に関係なく所得水準に応じた負担割合を検討するべきだ」と指摘している。