誰にとっても認知症は無縁ではない。2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると推計されている。安心して自分らしく暮らせるようサポートする仕組みのひとつが、成年後見制度だ。必要な人が制度を利用しやすくするには、本人や家族に身近な自治体の取り組みが欠かせない。
地域ぐるみで高齢者を支えたい
成年後見制度は認知症などで判断力が衰えた人に代わり、弁護士や司法書士、親族らが財産管理や福祉サービスの手続きなどを支援する制度だ。介護保険とともに00年に始まった。現在の利用者数は22万人足らずで、まだ十分に利用されていない。
定着のカギを握るのは自治体の取り組みだ。政府は制度を普及させるための「中核機関」を21年度末までに全市区町村に設けることを目指している。高齢者や親族らの相談にのるほか、家庭裁判所が後見人を選任するさいに候補者を推薦したり、後見人をバックアップしたりする組織だ。
とりわけ後見人の支援は重要だ。家裁が選任する後見人は専門職が多くを占め、親族は2割強にすぎない。中核機関からの支援があれば、家裁も親族を後見人として選びやすくなる。
ただ、設置はまだ始まったばかりだ。厚生労働省のまとめでは18年10月時点で全国の自治体の4.5%、79自治体にとどまった。今後の設置予定時期を答えた自治体をあわせても2割強だ。
中核機関は、決して新たな箱物をつくるものではない。社会福祉協議会や地域包括支援センターといった既存の組織を活用するなど、やり方は多様だ。複数の自治体が連携してひとつのものをつくるケースもある。自治体は地域の実情に応じて、どう取り組めるか工夫してほしい。
最近は身寄りのない高齢者のために、首長が制度を申し立てることも増えている。制度について一定の知識を身につけた市民後見人の養成も大切だ。安全網を厚くするために、自治体ができることは多くあるはずだ。