伊予銀行、日立製システムの開発中止 
IBM機器を更改

Source: Nikkei Online, 2025年3月18日 5:00


伊予銀行が勘定系システムの動作プラットフォームである日本IBMのメインフレームを更改することが日経FinTechの取材で分かった。同行は日立製作所と進めていた次期勘定系システムの開発中止を決めていた。メインフレームを一旦更改することで、次期システムの検討や開発に必要な時間を確保する狙いがある。

日経FinTechの取材に対して、伊予銀行が明らかにした。同行は独自に開発・保守する勘定系システムを日本IBMのメインフレーム上で動作させている。

伊予銀行がメインフレームを更改するのは、日立と進めていた次期システムの開発が頓挫したことが大きい。同行は23年10月、日立のオープン勘定系パッケージである「OpenStage(オープンステージ)」を活用し、次期システムを構築することで日立と基本合意したと発表していた。現行システムを30年以上利用しており、技術面で老朽化が目立ち、システム人材の確保も難しくなっていたという。

伊予銀行が開発中止を決めた次期勘定系システムの特徴
(出所:いよぎんホールディングスの資料を基に日経FinTech作成)

24年11月中旬時点で詳細設計まで工程が進んでいたものの、伊予銀行は25年2月7日に開発中止を発表した。同行はその理由について「新システムのベースとなる日立のシステムの提供が、予定より開発に時間を要する」といった事情から、当初見込んでいた28年の稼働が難しくなったためと説明する。日立は「コメントを差し控える」(広報)としている。

日立とのプロジェクトが頓挫したことで、次期システムの開発は仕切り直しになった。まず伊予銀行は今回の事態に陥った原因分析などを急ぐ方針だ。その上で、次期システムの方針や体制を改めて固めて、開発プロジェクトを進めることになる。必要な時間を確保するために、現行システムの動作プラットフォームである日本IBMのメインフレームを更改する。

滋賀銀行も富士通メインフレームを更改

滋賀銀行も伊予銀行と同じような道のりをたどっている。滋賀銀行は日立のOpenStageを活用して次期勘定系システムの開発を進めていたが、24年12月に開発中止で日立と合意したと発表していた。日立が同行に「和解金」として80億円を支払うという異例の結末だった。

滋賀銀行は足元で、次期システムを手掛ける開発会社の選定を進めている。開発会社を決めた上で、開発プロジェクトを本格始動させることになる。ただ、現行システムが動作する富士通メインフレームの保守期限が26年12月に迫っており、時間的な余裕がない。そこで、約61億円(24年3月期の有価証券報告書)を投じて富士通メインフレームを更改し、時間を確保する。

伊予銀行と滋賀銀行ともにメインフレームの更改は苦肉の策という側面が強い。老朽化した勘定系システムの抜本的な見直しは先送りした格好だ。両行とも次期システムの刷新に一度つまずいているだけに、地方銀行で一般的な共同化システムへの参画も有力な選択肢として浮上しそうだ。

(日経クロステック/日経FinTech 山端宏実)

[日経クロステック 2025年2月28日付の記事を再構成]

 

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