中国DeepSeek、AIモデルを改良 
「OpenAIに近づいた」

Nikkei Online, 2025年5月30日 6:04

1月のディープシーク・ショックのきっかけになった「R1」を改良した=ロイター

【シリコンバレー=山田遼太郎】中国の人工知能(AI)開発新興DeepSeek(ディープシーク)は29日、数学やプログラミング分野に強いAIモデル「R1」を改良したと発表した。長い時間をかけて問題に取り組めるようにして応答の精度が高まり、米オープンAIや米グーグルの技術に「全般的な性能が近づいた」としている。

R1はAIの論理思考モデルと呼ばれ、応答までに長考して複雑な問題を順序立てて解くことを得意とする。ディープシークは中国勢でいち早く高性能の論理思考モデルを発表し、オープンAIやグーグルと米中間の開発競争が激しさを増すきっかけになった。

今回改良したR1は、高校生らが参加する「国際数学オリンピック」米国予選の2025年の問題を解くと正答率が87.5%と、従来の70%から上昇したという。同じ試験で、オープンAIが4月に提供を始めた最新の論理思考モデル「o3」の正答率は88.9%だった。

ディープシークは 1つの回答により多くの計算資源を使うようにして、モデルの性能を高めたと説明した。 AIが間違いを含む回答をつくる「ハルシネーション(幻覚)」の発生率も減らしたという。一方、異なるソフト同士をつなぐ「API」の仕組みで開発者らに提供する際の料金は変えていない。

ディープシークは当初の R1を1月に公開した。オープンAIの当時の最新モデル「o1」に匹敵する性能を低コストで実現したと説明し、中国のAI開発力の高さを印象づけた。巨額のAIインフラ投資が不要になるとの見立てから米エヌビディア株が急落するなど、株式市場を大きく揺らした。

ディープシークは外部の技術者らが自由に利用・改変できる「オープンソース」方式で AIモデルを提供している。中国発技術のため同社のAIサービス利用にはデータ流出などのリスクが指摘される一方、米マイクロソフトや米アマゾン・ドット・コムがこぞってクラウドサービスにディープシークのモデルを取り入れた。

ディープシークの追い上げを受け、オープンAIはR1への対抗策となる論理思考モデルをオープンソースで公開する方針を示している。

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