Nikkei Online, 2025年12月12日 18:05

【シリコンバレー=山田遼太郎】米オープンAIは11日、対話型AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を動かす新型AIモデル「GPT-5.2」の提供を始めた。米グーグルとのAI開発競争でチャットGPTの公開以降で初めて守勢に立ち、世界8億人の利用者のつなぎ留めに動く。
オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は11日、新技術を「付加価値の高い知識労働を担えるモデルだ」と語った。文書やプレゼン資料の作成、数学の正答率といった性能を高めた。競合のグーグルや米アンソロピックのAIを多くの性能指標で超えたと主張した。
ビジネス用途での使い勝手の改善を強調した。AIの誤回答を減らし、金融アナリストの財務分析やプログラミングといった高度な作業を担えると説明した。オープンAIは赤字経営のため、企業向けのAI販売を増やして採算を改善する狙いがある。
オープンAIはアルトマン氏が1日に発した「コードレッド(非常事態宣言)」のさなかだ。グーグルが11月に発表したAIモデル「Gemini(ジェミニ)3」がオープンAIの技術を上回ったことを受け、チャットGPTの改良を全社の最優先事項とする。
オープンAIは2022年のチャットGPT以降、AIサービスの投入で先手を打ってきた。対話型AIにネット検索や音声会話といった機能をいち早く加えた。最先端モデルの開発でも優位を保ってきたが、ジェミニ3の登場で守勢に回った。

「オープンAIはグーグルを、グーグルはオープンAIを目指している」。米著名ベンチャー投資家のマーク・アンドリーセン氏は両社の競争をこう評した。オープンAIは広告で巨額を稼ぐグーグルのような収益モデルを必要とし、グーグルには新興企業であるオープンAIのような機敏な動きが求められるとの見方だ。
オープンAIはチャットGPTを軸に、ブラウザー(ウェブ閲覧ソフト)や半導体、クラウドを一体で手掛けるAIのプラットフォーマー企業を目指す構想だ。グーグルはすでに参入済みで、オープンAIが後追いする分野が多い。
一方、グーグルはAIの性能向上に加え、利用者獲得でも勢いに乗る。ジェミニの月間利用者は6億5000万人に上る。
3年前、組織がまとまりを欠くうちに生成AIでオープンAIに出し抜かれた。その危機感からAI開発体制を集約し、グーグルは「本領発揮に時間はかかったが、もう過去には戻らない」(チーフサイエンティストのジェフ・ディーン氏)と自信を深める。
オープンAIは11日、創業の発表から10年の節目を迎えた。アルトマン氏は同日の声明で「次の10年では(人間の知能を上回る)超知能の開発がほぼ確実だと確信する」と記した。
オープンAIはアルトマン氏や起業家のイーロン・マスク氏がグーグルによるAI独占を防ぐために立ち上げた。グーグルに優位を保つことは存在意義の一つといえる。オープンAIは今後もAI開発のリーダー企業でいられるかの岐路に立っている。