Appleが iPhone 16e発売 SEの「後継」、9万9800円から

Nikkei Online, 2025年2月20日 4:43更新

【シリコンバレー=中藤玲】米アップルは19日、新型スマートフォン「iPhone 16e」を28日に発売すると発表した。価格は599ドル(日本での価格は9万9800円)から。自社の生成AI(人工知能)に対応した中では低価格に抑え、新興国を中心に需要の掘り起こしを狙う。


アップルは新型スマホ「iPhone 16e」を発表した(写真はアップルのニュースリリースより)

新機種の画面サイズは6.1インチで、最新の「iPhone16」と同じだ。2022年3月に発売した「iPhone SE」の第3世代(4.7インチ)より大きく、有機ELパネルを採用した。色は白と黒の2種類。21日に予約の受け付けを開始し、28日に発売する。

前機種と比べ6割高

実質的にはSEの後継機種という位置付けだが、米国での最低価格はSE(429ドル)より4割高く、日本での価格は6割高くなった。16(799ドル、12万4800円)に比べると、米国価格は25%安く、日本価格は2割安い。

指紋認証機能のあるホームボタンを廃止し、顔認証技術「Face ID」を導入した。ホームボタンは07年の初代iPhoneで登場した象徴的な操作体系だったが、これで全ての最新ラインアップからなくなる。

よく使うアプリなど特定の機能を起動できる「アクションボタン」を搭載した。同ボタンは23年発売の「iPhone15」シリーズの上位機種や16シリーズで導入している。充電端子も15以降と同じく、独自規格「ライトニング」から「USBタイプC」に移行した。背面カメラのレンズは1つで、カメラ機能は4800万画素だ。

初めて自社で設計した通信用半導体「C1」を搭載し、電力効率を高めて電池の駆動時間を伸ばした。通信半導体はスマホの中核技術で、19年に米インテルの事業を買収して内製化を進めてきた。米半導体大手クアルコムの部品から置き換えていく。

アップルの生成AI「アップルインテリジェンス」も使える。16と同じ自社開発半導体「A18」を採用し、端末内のデータ処理性能を高めた。写真から不要なものを消したり、簡単な単語を入力してオリジナルの絵文字を作ったりできる。

アップルインテリジェンスは4月に日本語など対応言語を増やす。現在は英語だけで、現行モデルでは16シリーズの全4機種と、「15 Pro」と「15 Pro Max」だけで使えていた。今回、価格を抑えた機種にも搭載することで利用を広げる狙いだ。

19日にアップルが公開した16eの発表動画では、ティム・クック最高経営責任者(CEO)が「これでiPhone16ファミリーが完成する」と話した。19日の米株式市場でアップルの株価は、前日終値とほぼ横ばいで推移している。

新興国や中国市場のてこ入れ目指す

スマホ市場は成熟期に入っている。米調査会社IDCによると、23年の世界出荷台数は過去10年で最低水準だったが、24年は23年比6.4%増の12億3880万台に回復した。中国メーカーが新興市場で低価格帯を積極投入したことが大きい。

アップルの世界シェアは18.7%で首位を維持したが、23年から1.4ポイント低下し、出荷台数も23年比で0.9%減った。3位の中国メーカー小米(シャオミ)は幅広いラインアップで24年の出荷台数が15.4%増になるなど、競争が激しくなっている。

24年の iPhoneの平均販売価格は1000ドルを超えている。新しい 16eは近年のラインアップでは低価格で、販売が低迷している中国や新興国での底上げを目指す。

一方、その他のスマホの平均(295ドル)に比べると2倍で、割高の印象は拭えない。従来のSEは部品コストを抑えて低価格で販売していたが、16eは生成AIに対応するための高性能半導体などを採用するためコストが上昇した。

また従来の SEは大画面化を嫌う一定の需要もあったが、今回は 16と同じサイズの導入に踏み切った。買い控えていた層の需要を掘り起こせるかは、価格に見合う AI機能の魅力を高められるかが鍵になる。

 

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