稀勢の里が奉納土俵入り 明治神宮に1万8千人


 大相撲の第72代横綱に昇進した稀勢の里が27日、東京・明治神宮で横綱推挙状授与式と奉納土俵入りに臨んだ。明治神宮によると1万8千人が詰めかけ、正午すぎには本殿前への入場が制限された。日本相撲協会によると、貴乃花の2万人に次ぐ来客となった。

奉納土俵入りで雲竜型のせり上がりを披露する
横綱稀勢の里=右(27日、東京・明治神宮)=石井理恵撮影

 稀勢の里は太刀持ちに弟弟子の小結・高安、露払いに同じ二所ノ関一門の幕内・松鳳山を従え、重さ6.4キロの純白の綱を締めて本殿前に登場。攻守兼備を表すとされる雲竜型を初披露した。四股を踏み下ろすたびに「よいしょ」の掛け声や「日本一」の声が飛び交い、19年ぶりの日本出身横綱の誕生を温かく祝福した。

 「ゆったり、大きく、力強くを心がけた」と語った新横綱は「無事に終えられてよかった。責任感がますます強くなった」と決意を新たにした。現役時代、雲竜型だった八角理事長(元横綱北勝海)は「腰がしっかり割れ、最初なのに立派だった」と合格点を与えた。


稀勢の里、横綱へ 亡き師に続く遅咲き大輪


横綱昇進の伝達を受け、口上を述べる稀勢の里(中)
(25日午前、東京都千代田区)

 日本相撲協会は25日、東京・両国国技館で大相撲春場所の番付編成会議を開き、大関稀勢の里(30)=本名萩原寛、茨城県出身、田子ノ浦部屋=の 第72代横綱昇進を全会一致で決めた。 日本人出身横綱の誕生は 1998年夏場所後の3代目若乃花以来、19年ぶり。

 貴乃花の引退で 2003年初場所を最後に途絶えていた日本出身横綱も 14年ぶりに復活、春場所は 2000年春場所以来の4横綱となる。

 相撲協会からの使者を羽織袴(はかま)姿で迎えた稀勢の里は「横綱の名に恥じぬよう精進致します」と口上を述べた。


稀勢の里、横綱へ 亡き師に続く遅咲き大輪

 3代目横綱若乃花以来、19年ぶりという大望久しい日本出身横綱の誕生――。 国民的期待を稀勢の里は一身に受けてきた。 過去、優勝次点12度という数字がファンのため息の数を表している。 14日目、優勝を決めた支度部屋で流した一筋の涙は「針のむしろ」から解放された安堵感が誘ったものだった。

初優勝を決め、笑顔で手を振る稀勢の里関
(右)=22日夜、東京都墨田区

 大関までもたやすいものではなかった。 2010年、白鵬の双葉山の 69連勝を目指すカウントダウンが始まる九州場所直前に師匠の鳴戸親方(元横綱隆の里)に聞いたのは「萩原(稀勢の里の本名)は稽古があまり好きじゃない」と想像もしない答えであった。

 午前中に2度も稽古する異例の部屋である。 しかし、それは量のことではなく“自主性”の問題であった。 下半身を鍛える単調なシコを誰からも指摘されることなく踏み続ける孤独な修練。 その心の持ちようのことである。 「受けに回ると弱い。 相手にプレッシャーがかかるとかさにかかっていくところがある」。 師匠は弟子のことをよく見ているものだと思った。

 その九州場所2日目に前頭筆頭の稀勢の里は白鵬の連勝の夢を 63で粉砕する。 相撲史に残る歴史的な一番(13年名古屋、43で白鵬の連勝をストップしたのも稀勢の里)。 この時、浮かんだのは双葉山の連勝を止め、後に横綱に昇進する安芸ノ海の名前だった。

 1年後、師匠が急逝。 その無念の涙が大関へ後押しした。 しかし、試行錯誤は続く。 悩みの中から出稽古やシコに新生面を見いだし、琴奨菊や豪栄道の優勝に刺激されて夢に到達した。 大関 31場所の集大成、苦節 15年の辛抱のたまものだろう。

 おしん横綱といわれた師匠の隆の里は糖尿病と闘いながら千代の富士に16勝12敗の成績を残した。 師と同じく 30歳の声を聞いてからの遅咲き横綱となるが「本当の力が出るのは 30から」と初代若乃花はよく言ったものだ。 その荒稽古でなる二所ノ関一門の伝統は、弟子から弟子へと伝えられ体にしみついている。 力士同士のなれ合いや芸能と相撲の接近を嫌う相撲の本道が、相撲一筋のいちずな稀勢の里には流れている。 この日本出身横綱の誕生が、大相撲の醍醐味をもっと高めてくれる予感がある。
(編集委員 工藤憲雄)


初V稀勢の里、横綱確実に 白鵬破り14勝

 大相撲の東大関稀勢の里(30)=本名萩原寛、茨城県出身、田子ノ浦部屋=の横綱昇進が初場所千秋楽の22日、確実になった。日本出身力士として3代目若乃花以来19年ぶりの新横綱誕生となる。21日に初優勝を決めていた稀勢の里は千秋楽で横綱白鵬に勝って14勝1敗の好成績で終えた。

 日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、昇進を審議する臨時理事会の開催を審判部から要請され、受諾した。23日に開かれる横綱審議委員会(横審)を経て、25日の春場所番付編成会議後の臨時理事会で、「第72代横綱稀勢の里」が正式に誕生する。

 番付編成を担う審判部の二所ノ関部長(元大関若嶋津)は「昨年は年間最多勝という実績があり、今場所も優勝を果たした。(審判部の)全員が賛成した」と述べた。
〔共同〕