後半、モールを押し込まれる日本代表
チームの先頭に立って戦ってきたリーチ主将が右膝をつく。松島は両足を投げ出して座り込む。空っぽになるまで全てを出し切った、日本の終戦だった。
2点差で折り返した大健闘の前半、既にダメージがあった。体を痛めて動けなくなる選手が多発。今大会で初めての光景だった。「ハーフタイムで選手(の状態)が少し落ちていた」とジョセフHCは言う。その傷口を南アフリカのパワーが押し広げる。最大の武器、スクラムとモールで徹底的に攻め、スコアを重ねる。後半は得点の雰囲気がほとんど漂わなかった。
「用意したことを全部出して相手を苦しめるところまでいったけど、やっぱりレベルの違いが見えた」。今大会MVP級の活躍だった堀江が言う。確かに日本も用意した刀は存分に振るった。相手のハイボール攻撃には松島らが勇敢に跳び、ほぼ完璧に対応した。苦戦が予想されたラインアウトではトリックプレーを駆使。フィジカル勝負を避けるため様々なキックも使い、効果はあった。
南アフリカに敗れ、目を覆う田中(右)と田村
ただ、全てを出し切ったのは相手も同じ。後半28分、日本がゴール前のラインアウトからモールを狙う。しかし、ボールを確実に確保するため、前列に投げる狙いが読まれていた。球を奪われ、最後の好機はついえた。
南アは研究していた。日本が快足の両翼に回そうとすると、外の選手がダッシュし、パスコースに蓋をする。内側の選手が迷う場面が多発。姫野やマフィらの突進力もこれでは半減する。タックルされながらのオフロードパスも警戒。日本選手の腕を抱えるなどしてボールの制御を奪う。これまではつながっていたあと1本が届かなかった。
「南アが強くてかなわなかった」と堀江。頂上まで駆け上がるかもしれない真の強豪が、フルパワーを見せてくれた。涙に暮れる選手の傷を癒やすことはできなくとも、日本が見たことのない世界を体験できたことに意味がある。「アジアで初めて8強に行って歴史をつくった。日本はこれからますます強くなるだけ」とリーチは言う。
芝の上で、日本は最後の円陣をつくった。肩を組み、主将が仲間に語り掛ける。「このチームを誇りに思う。下を向く時間はない」。頂点までの距離と、明日への希望をつかんだ完敗で、日本の戦いは終わった。
(谷口誠)