日本3連勝、サモアに38-19 ラグビーW杯

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ラグビーのワールドカップ(W杯)1次リーグA組第3戦、日本―サモアは5日、愛知県豊田市の豊田スタジアムで行われ、初の8強入りをめざす日本が、世界ランキング15位のサモアに38-19で勝利した。3連勝の日本は勝ち点を14に伸ばし、前回2015年大会に並ぶ1大会最多3勝で初の決勝トーナメント進出へ大きく前進した。また、同組3位以内が確定し、次回2023年フランス大会出場権を確保した。

前半、トライを決めるラファエレ(下)、ページ末に HTML5 Video

日本は前半SO田村(キヤノン)の3PGやラファエレのトライで16-9とリードして後半に突入。後半もラインアウトからのモールを持ち込んでトライを決めるなど優勢に試合を進めた。1次リーグは残り1試合で、日本は13日の最終戦でスコットランドと対戦する。A組で2位以内に入れば8チームによる決勝トーナメントに進む。

グループ最強のアイルランドを打ち破ってから1週間。チームは大金星の余韻に浸ることなく、すぐに次のサモア戦に視線を向けた。「過去2試合は終わったこと。先週よりもいい準備すること」(SOの田村)という意識を31人の選手が共有。慌てることなく着実にペースをつかみ、80分を走りきった。

序盤は互いに自陣でファウルを犯し、PGの応酬となった。日本は田村、サモアはCTBのタエフが正確に蹴り込んでスコアを積み重ねた。

サモアのフランカー、イオアネが危険なタックルをしたとしてシンビン(一時退場)となり数的優位が生まれた前半27分、日本に待望の初トライが生まれる。

きっかけはスピードに乗ったWTB松島が、敵の防御網の真ん中を突き抜けた好プレー。一度は倒れながらも、すぐに立ち上がって一気にゴールライン近くへとボールを運んだ。そこから左に展開し、CTBラファエレが強引にインゴールに飛び込んだ。

圧巻は後半13分、敵陣深くのラインアウトモールで約10メートルを押し切った。重量感たっぷりのFWを前面に押し出してくるサモアを、日本が力でねじ伏せた。トライを決めたのはナンバー8の姫野。「サモアのフィジカルに負けない自信がある」という自らの言葉を見事に証明してみせた。

最後のワンプレーでもスクラムで相手を押し込み、大外で待っていた松島がチーム4つめのトライ。ボーナスポイントをしっかりと手にした。悲願のW杯8強入りまであと一歩。「(ここまで)一つ一つ戦ってきています。今回の勝利を楽しんで、そして次、タフな試合になりますがまた準備したい」と日本のジョセフ・ヘッドコーチ。4年間かけて少しずつ積み上げてきた自信を胸に、最後に待ち受けるスコットランドに思い切りぶつかりたい。

(木村慧)

ラグビー日本、ボーナス点もぎ取った「地味な技術」

点差を開けての快勝なのに、クライマックスは終了間際に訪れた。待望のボーナスポイント(BP)まで1トライ足りないまま、ラストプレー。相手ボールのスクラムで、プレーが途切れたら試合終了だった。

サモアに信じがたいミスが出る。SHがボールを斜めに投入したとしてFK。攻撃権は日本に渡った。珍しい反則だが、日本に厳しかったペイパー主審も目をつぶれないほど、ボールはサモア側に転がっていた。そうでもしないと球を確保できないと日本が思わせていた。「後半のスクラムはとても良かった」とラブスカフニ・ゲーム主将。組んだ瞬間に優位に立ち、体勢が乱れた相手を押し込む。反則やボール奪取に結びつけていた。

ボールを取り戻した後のスクラム。日本は一押しして左に攻める。最後は松島が仕留めて任務達成。最終戦の相手、スコットランドに重圧をかける勝ち点を得た。「最後のところでBPの違いが出てくると思う」とジョセフ・ヘッドコーチ(HC)も喜ぶ。

全体の試合運びは理想的とはいえない。最初の50分間、時間を消費するPGが両軍合わせて10度もあった。細切れの動画のような展開は相手をガス欠に持ち込みたい日本の狙いと正反対だった。

日本の反則は3試合で最多の10度。密集戦でフォローが遅れ、ボールに絡まれたものもあれば、防げるうかつなものもあった。「きょうのサモアは強かった」とジョセフHCが言う通り、相手は今大会最高のプレーも見せている。その難敵に、流れが悪くとも快勝。BPまで取れたのははっきりした日本の進歩である。

「いいスクラムが4トライ目のベースにあった」とラブスカフニ。大きかったのはセットプレーの安定である。スクラム、ラインアウトは3試合続けて全てのボールを確保した。BPへ望みをつないだ後半の2トライ目。日本はラインアウトからモールを組む。右にずらして相手の力をそいだ後、FW8人にバックス3人も加勢して、ゴールラインまで押し込んだ。

バックスの選手までがどこに入るかまで細かく決めているチームは世界にもほぼない。体格で劣るスクラムでの優位も、事前の準備のたまものである。劇的な幕切れの背後にあったのは、日本らしい、地味だが繊細な技術だった。

(谷口誠)