2019年9月18日(水)(愛媛新聞)
松山剣道会の加茂勝子さんがこのほど、73歳で剣道6段の審査に合格した。竹刀を握ったのは49歳と遅かったが、鍛錬の日々を重ねて20回目の挑戦で難関を突破。「6段はずっと目標にしてきた。叱咤(しった)激励し、ご指導いただいた高段者の先生方のおかげ」と感謝を語る。
6段の審査は年数回あり、実技と形で評価される。5段取得から5年以上たたないと受験できず、合格率は毎回2割前後という狭き門だ。
松山剣道会会長を務め、2年前に亡くなった夫の功さんとともに、武道具店を営んでいた加茂さん。仕事と子育てに忙しく、剣道を始めるつもりはなかったという。
きっかけは剣道会の保護者に誘われたこと。一度始めたら真っすぐな性格もあり、楽しみながら稽古に打ち込むようになった。毎朝の稽古後は、幼いころから親しんでいた水泳でリフレッシュ。「遅い青春が来たよう。剣道をしているときは、悲しいこともつらいことも忘れられた」
2007年に5段を取得するまでは順調だったが、6段の壁は厚く、「何度も落ちて、そのたびに反省を繰り返した」。しかし、決して諦めることはなく、県連盟が主催する県武道館での朝稽古にほぼ毎日通い、高段者に指導を受けた。本番同様の稽古や映像での振り返りを重ね、課題を一つ一つつぶしていった。
福岡市で8月に行われた審査会では、構え、声、そんきょといった「自分の心掛け一つでできること」にこだわった。実技では1人目の初打で面を決め、気負うことなく「無心になれた」。全体を通して平常心で臨めたという。
昇段が決まった瞬間を「ほっとした。夢のようだった」と振り返る。大きな目標を達成した今後について、加茂さんは「体が続く限り、向上心を持って剣道を続けたい。子どもたちの成長のお手伝いもできれば」と穏やかに語った。