日本人は「不幸せ」? 
幸福度調査の世界順位、低いワケは

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Nikkei Online, 2025年12月13日 5:00

各種調査で日本の幸福度は低く出がちだ(東京都千代田区の通勤風景)

日本は今なお世界4位の経済大国で、長寿も世界トップレベル。だが、国や地域別に「幸福度」をはかる国際調査では、順位の低迷が続いている。なぜなのだろうか。

英オックスフォード大などがまとめる「世界幸福度報告書」2025年版で、日本は147カ国・地域のうち55位と、前年の51位から順位を下げた。同調査は各国・地域の約1000人に対し、生活満足度を0から10の範囲で自己評価してもらい、直近3年間の結果を平均して幸福度を測定する。

国・地域間の違いを理解するための項目別データをみると、日本は「健康寿命」は世界2位、「1人あたりの国内総生産(GDP)」は世界28位と高水準。一方で「人生の自由度」(79位)や「寛容さ」(130位)などの順位が低い。

他の調査でも日本の幸福度は低迷している。米ハーバード大学などの研究チームが4月に公表した調査結果では、調査対象の22カ国・地域中で最下位。国際調査会社の仏イプソスが25年に実施した幸福度ランキングでも日本は30カ国中27位だった。

どうして日本の順位は低くなりがちなのか。幸福度の分析をする青山学院大学教授の亀坂安紀子さんは「当然の結果」と言い切る。

賃金の伸びが物価上昇に追いつかず、男性の稼ぎだけで家計を支える生活モデルが厳しくなった。仕事をする女性は増えたが、家事負担は減っておらず、時間に余裕がない人が増えており「時間貧困で、生活満足度が低い」(亀坂さん)。幸福度を上げるには、睡眠時間を長くし趣味や娯楽を楽しむ時間を確保することが有効だとみる。

一方で「日本人は世界一幸福だが、その幸せに気付けていない」ことが低迷の原因と分析するのは、幸福やストレスについて詳しい精神科医の樺沢紫苑(しおん)さん。感謝の気持ちを持つとセロトニンという脳内物質が出て幸福感を感じられるが、日々の生活に不自由しないことが当たり前になり、感謝の気持ちを持ちづらくなっているとみる。

調査方法が一因との見方もある。幸福度の調査に詳しい武蔵野大学教授の前野隆司さんは、幸福度を聞く調査だと「謙虚」に回答しがちな日本人は順位が低くなりがちだと指摘する。

「個人主義的な国は(自分の幸福度を)高めに答えて(アジアなど)集団主義的な国の人は低めに答える傾向がある。その点は差し引いて考えた方がよい」(前野さん)

一方で前野さんは、日本人が孤独を深めていることが幸福度を下げている側面もあるとみている。「もともと日本人は誰かと一緒に過ごすと幸福を感じやすい傾向にあるが、欧米的な個人主義の広がりと共に幸せを感じにくくなっているのではないか」

世界幸福度報告書は「若年成人の孤独感は日本が突出している」と指摘する。報告書中の調査では、日本の若年成人の30%以上が、家族や友人など親しいと感じられる人が「いない」と回答した。

高齢化や晩婚化により、一人暮らしをする単独世帯も増えている。日本は誰かと一緒に食事をする頻度のランキングで、142カ国・地域のうち133位だった。

誰かと一緒に食事をする割合が高い国の人は、社会的に強く支えられていると感じ、孤独感が弱い傾向にあるという。日本では主体的に「おひとりさま」を選び単身生活を楽しんでいる人もいるが、社会的に孤立し困りごとを一人で抱える人も少なくない。

孤独を解消し、幸福を感じられるようにするためには何が必要なのか。前野さんは人同士のつながりの強さを取り戻すための「強固なコミュニティーづくりが大事」だと主張する。前野さんによると、地方へ移住したり、シェアハウスで暮らしたりする若者は幸福度が高まっているという。多くの人と関わり孤独感を感じる時間が減るためだ。

「根本的な豊かさを感じられるコミュニティーをつくりたかった」。一般社団法人えんがお(栃木県大田原市)代表理事の濱野将行さんはこう話す。高齢者らが集うサロンや子どもたちの勉強スペースなど、老若男女が「ごちゃまぜ」になって交流する居場所づくりを進めており利用者は年間4000人にのぼる。

えんがおでは高齢者の孤立を防ぐ

利用者からは料金を受け取るが、お客様扱いせず一人ひとりにゴミの片付けやお茶くみなどの仕事を与える。毎朝えんがおに出向くという吉成一子さん(83)は「あなたがいて助かったと感謝されるのがうれしい。みんなでおしゃべりして幸せなパワーをもらっている」と笑顔だった。

幸福のあり方は個人や社会によっても様々。だが他の国や地域と比較することで見えてくることもある。順位に一喜一憂するのではなく、社会のあり方を見直すきっかけと捉えたい。

(柴田奈々)


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