衆院選、世界はどう見たか 
独紙「高市氏に学べ」米紙「バズる達人」

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Nikkei Onine, 2026年2月13日 5:00

米メディアは「大勝」「地滑り的勝利」などの見出しで衆院選の結果を伝えた(2月9日付の米国の主要紙)

衆院選は自民党が単独で3分の2超の議席を獲得する歴史的圧勝となった。海外メディアは日本の将来を占う選挙結果をどう伝えたのか。欧米やアジア諸国の報道からは、高市早苗首相の人気の理由や日中関係の先行きへの高い関心がうかがえる。

投開票日の8日から10日までに紙面やオンラインに掲載された海外主要メディアの報道を調べた。

選挙結果について、ほとんどのメディアが高市首相の「歴史的な大勝」「地滑り的勝利」などと報じた。

「彼女の決断力、率直なコミュニケーションスタイル、楽観主義な姿勢と男性優位の政界で女性としてのアウトサイダーの地位に有権者は熱狂した」(米紙ウォール・ストリート・ジャーナル=WSJ)

「物価高や政治資金スキャンダル、宗教団体との関わりによって近年の選挙で後退していた自民党にとって、大きな転換を意味する」(インド紙タイムズ・オブ・インディア)

南ドイツ新聞は「彼女は選挙に勝つ方法を知っている。ドイツは彼女から学べる」と題したコラムを掲載した。「高市氏の『日本第一』政策を好意的にみる必要はないが、日本と共通点が多いドイツは学ぶべきだ」と説いた。

「両国とも政治の両極化が進み、人々はグローバル化に飲み込まれていると感じている。外国人への嫌悪感が高まっているが、人口減で移民に依存している」と記した。

「バズる瞬間を操る達人」

米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は「日本の指導者が自民党をどん底から救った方法」と見出しを立てた。

外国人管理の厳格化といった保守的な政策に加え、来日した韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領とのドラム共演に触れ「バズる瞬間を巧みに操る達人」だと評した。「強く豊かな日本を求める愛国的な呼びかけと、彩りのあるSNS投稿が若者をひき付けた」と総括した。

若者の支持に注目したメディアは多い。米CNNは日本人が親しい友人に使う愛称として「ちゃん」を紹介し、首相を「さなちゃん」と呼ぶ20歳の若者の声を取り上げた。

人気を説明するキーワードとして「日本第一」や「コミュニケーション能力」などが共通する。政治的スタンスは「保守派」あるいは「タカ派」の見方で一致する。

WSJは圧勝した高市氏が「政治的資本を保守主義の運動に注ぎ込む誘惑に駆られるかもしれない」との見方を紹介した。憲法改正に踏み切り「自衛隊を本格的な軍隊として認める」可能性に言及した。「他の政党や一部国民から強い反発に直面する事態もあり得る」と続けた。

ドイツ誌シュピーゲルは「減税と大規模な軍備増強という物議を醸す計画を進める道が開けた」と指摘した。

AP通信は高市氏を「超保守主義(ultraconservative)」と位置づけた。トランプ氏が日本に求める防衛費の増額について「28年まで(国政)選挙がないため、彼女には取り組む時間がある」と分析した。

韓国の革新系紙ハンギョレは「危うい平和憲法」の見出しで、高市氏が憲法改正に意欲をみせていると報じた。高市氏は選挙直後の9日の記者会見で、改憲について「少しでも早く国民投票が行われる環境をつくれるよう粘り強く取り組む」と訴えた。

中ロは日本の「右傾化」を警戒

ロシアや中国メディアは高市政権によって日本が「右傾化」していると警告した。

ロシア紙ベドモスチは「早苗旋風」で基盤を固めた政権下で「非核三原則が見直される可能性がある」との見解に触れた。

中国共産党機関紙、人民日報は高市氏を「右翼政治家」と断じ「戦後の平和体制を打破しようとする危険な意図を隠そうとせず、国内外から強い批判を浴びている」と主張した。

高市氏に批判的な日本と欧州、韓国の識者を取り上げ「台湾に関する誤った発言を撤回し中国に謝罪すべきだ」「地域全体の平和にとって大きな脅威だ」といったコメントを並べた。

日本、中国の双方と関係が深い東南アジア諸国連合(ASEAN)のメディアは日中関係に気をもむ。

インドネシアのニュースサイト、コンパスはアジア太平洋地域が高市氏の対中外交に注目していると指摘した。「高市氏はタカ派として知られ、北京に強硬な姿勢をとることが多い。25年11月の台湾についての発言は中国の怒りを買った」と報じた。高市氏の勝利によって日中関係が悪化する懸念があると分析した。

シンガポールの英字紙ストレーツ・タイムズは選挙後も日中間の緊張が続くと予測した。「中国側は選挙結果を日本政治の右傾化だとみている」という中国特派員の見立てを載せた。

立憲民主党と公明党が結成した中道改革連合や、25年の参院選で躍進した参政党など野党に関する記事は目立たない。

AP通信は野党が大敗した理由を「中道の結党や極右勢力の台頭もあったが、野党があまりにも分裂し真の挑戦者にはなり得なかった」とまとめた。

中国国営の新華社通信は衆院解散から投開票まで16日しかなく「立民は慌ただしい選挙戦を強いられ、公明党との新党も支持を広げられなかった」と解説した。

記者の目 国民支持を外交の力に

衆院選で高市早苗首相が果たした歴史的な勝利は海外でも驚きをもって受け止められた。高市氏の人気ぶりが殊更注目されるのは、低支持率にあえぐ欧州のリーダーとの違いが際立つからかもしれない。

米調査会社モーニング・コンサルトの調べでは、2月初旬時点で高市氏の支持率は56%と日米欧・新興国24カ国の首脳で5位につける。ワースト3に英国、ドイツ、フランスの首脳が並ぶ。「彼女に学べ」と唱える南ドイツ新聞の記事からは、支持率が低迷し内政・外交ともに滞る自国政権への歯がゆさがにじむ。

高市氏は「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」を取り戻すと主張する。3月にはトランプ米大統領との会談が控える。衆院選で固めた政権基盤を力に、米中との関係構築にも期待したい。
(小林拓海)


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