北朝鮮ミサイル、軌道予測の難度増す
 レーダーから消失

迎撃前提の対処困難、反撃能力は26年度以降

日米韓 3カ国の弾道ミサイル防衛に関する共同訓練に臨む護衛艦
「あたご」の自衛隊員(2月22日、日本海)=防衛省提供

政府は13日に北朝鮮が撃った弾道ミサイルの軌道を正確に予測できなかった。発射を探知した後にレーダーから消えたためで、発射失敗の可能性も含めて原因の分析を進める。北朝鮮は変則軌道を飛ぶ新型ミサイルなども開発しており迎撃を前提とする対応は難しさが増す。

防衛省は午前7時22分ごろのミサイル発射後、自衛隊のレーダーなどの探知情報から北海道周辺に着弾する恐れがあると分析した。発射からおよそ30分後、内閣官房が全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令した。

20分ほどして北海道周辺へ落下する可能性はなくなったと訂正した。日本の領域や排他的経済水域(EEZ)内には落ちなかった。松野博一官房長官はその後の記者会見で「探知の直後にレーダーから消失していた」と明かした。

防衛省は発射から1、2時間ほどでミサイルの高度や飛距離、落下地点の地図を発表するケースが多い。13日は午後6時時点でもこうした公表がない。空中で分解したなど様々な可能性が想定される。防衛省は「これ以上の詳細は現在分析中だ」と説明するにとどめる。

今回のミサイルは固体燃料型だったとの見方が浮上している。発射直前に燃料を注入する必要がある液体燃料型に比べて探知が遅れ、迎撃が難しくなるとされる。

北朝鮮はレーダーで見つけにくい低い高度を変則的な軌道で飛ぶミサイルの開発も進めている。移動式発射台や潜水艦など発射形態は多様になってきた。同時に多数を撃ち込む「飽和攻撃」の練度も上げてきたとの指摘がある。

弾道を正確に予測できなければ迎撃も警報の発令も難しい。

政府は2022年末に決定した安全保障関連3文書で相手のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」の保有を決めた。迎撃に頼る既存のミサイル防衛網だけでは「完全に対応することは難しくなりつつある」との危機感を明記した。

長射程のミサイルで反撃する能力を持ち、相手の武力攻撃自体を抑止するのが目的になる。反撃手段となる米国製巡航ミサイル「トマホーク」などが自衛隊に配備されるのは26年度以降になる。まだ3年間の「空白」がある。

日米韓3カ国は22年11月の首脳会談で、北朝鮮のミサイル情報を即時共有する方針を打ち出した。より正確な情報を獲得するための施策になる。日米韓の防衛当局は14日(日本時間15日)に米国防総省で実務者協議を開いて具体策を詰める。