Nikkei Online, 2023年3月18日 11:30
相模鉄道と東急電鉄が相互に直通運転する「新横浜線」が18日に開業した。全路線が神奈川県内にある相鉄が東急とつながり、東京や埼玉を含む3都県にまたがる14路線・総延長250キロメートルの広域ネットワークが誕生した。神奈川県央部と東京都心のアクセスが向上するとともに、相鉄は沿線の開発促進や住民増加を期待する。
新横浜線は東急の日吉駅から相鉄の西谷駅までの横浜市内5駅を結ぶ。日吉、新綱島、新横浜、羽沢横浜国大の4駅間の約10キロメートルを新設した。相鉄本線から東急目黒線、東京メトロ南北線を経由し、埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線の浦和美園駅(さいたま市)まで直通する。相鉄は都営三田線や東武東上線などとも直通する。
直通運転は一部の列車を除いて相鉄本線から東急目黒線方面と、相鉄いずみ野線から東急東横線方面で実施する。平日のダイヤは相鉄本線からが午前7〜9時に1時間あたり4本など1日54本、相鉄いずみ野線からは同じく6本など1日46本となる。
乗り換えの手間がなくなり、神奈川県央部から東京都心への所要時間が短くなる。相鉄いずみ野線の湘南台駅(神奈川県藤沢市)から東京メトロ副都心線の新宿三丁目駅(東京・新宿)までは最速59分、相鉄本線の海老名駅(神奈川県海老名市)から都営三田線の大手町駅(東京・千代田)までは同70分となる。
新横浜線の新横浜駅は新駅で、相鉄と東急にとって初めての東海道新幹線の乗換駅となる。JR東海は新横浜線の開業にあわせてダイヤを改正し、新横浜駅始発の「のぞみ」を新設。土曜日などに午前6時3分発の新大阪駅行きを運行する。相鉄沿線などからは品川駅経由よりも早く名古屋・大阪方面へ到着できる。
相鉄は大手私鉄のなかで営業路線が短く、2019年のJR直通線の開業まで東京都心への乗り入れがなかった。それだけに都心の主要駅に直通運転でつながる新横浜線の開業は、住民を沿線に呼び込む「切り札」として期待される。
沿線では再開発計画が動きだしている。横浜市は2月、新横浜駅南側の「篠原口」のまちづくり計画案を公表した。道路を整備するとともに、地権者らによる再開発準備組合が中心となって約3.5ヘクタールのエリアに高層のオフィス・商業ビルや集合住宅などを建設する。
新綱島駅周辺でも駅直結の複合施設「ドレッセタワー新綱島」などの整備が進み、マンション約250戸は完売した。東急東横線の綱島駅東口駅前の再開発も横浜市による都市計画が決まり、共同住宅や商業エリアなどで構成する複合施設が建設される。
相鉄いずみ野線のゆめが丘駅(横浜市)の駅前では、相鉄グループが24年夏に大型商業施設をオープンする。駅前の約24ヘクタールで再開発が進み、集合住宅や地域の中核となる病院の整備も予定される。(仲村宗則)
Nikkei Online, 2023年3月19日 5:00
相模鉄道と東急電鉄が直通する「新横浜線」が18日に開業した。神奈川県央部から東京都心への利便性が高まるだけでなく、両社にとって初めて東海道新幹線への乗換駅「新横浜駅」が開業し、中部・関西方面とのアクセスが大幅に向上する。沿線の再開発にも弾みがつき、横浜駅を中心としてきた地域の人の流れが一変する可能性も出てきた。
「新横浜駅が近くなる。これからは新幹線への乗り換えで利用することが増えると思う」。新横浜駅に来ていた横浜市在住の会社員の男性は新線への期待を口にした。
新横浜線の開通で新横浜駅へのアクセスは飛躍的に向上した。相鉄の各駅から新横浜駅までの所要時間は、海老名駅(神奈川県海老名市)から最速25分、湘南台駅(藤沢市)から最速23分、二俣川駅(横浜市旭区)からは最速11分。横浜駅まで行ってから乗り換える従来ルートに比べ20〜25分程度の大幅な短縮になる。
東急線の各駅から新横浜駅へも、東急東横線自由が丘駅(東京・目黒)から最速15分、武蔵小杉駅(川崎市)からは最速9分となった。山手線経由でJR品川駅(東京・港)を利用していた乗客が新横浜駅へシフトする動きも起きそうだ。
JR東海も新横浜駅の利用増を見越し、18日の新線開業に合わせて新横浜駅始発「のぞみ」の臨時運行を始めた。午前6時3分発の便は新大阪駅に同8時6分に到着する。東京駅始発の午前6時発のぞみは新大阪駅に同8時22分着、品川駅始発の午前6時発のぞみは同8時16分着で、品川・東京駅経由よりも10分程度早く新大阪に到着できる。
相鉄と東急電鉄もダイヤ改正し、早朝時間帯に新横浜駅始発に乗り換えられる電車を設定した。新横浜線の新横浜駅改札の外には新幹線への乗り換え客らの利用を想定した無料の待合室も設置する予定で、乗り換え需要の取り込みをはかる。
新幹線アクセスの向上は企業誘致にも追い風だ。横浜市経済局企業誘致・立地課の担当者は「新横浜エリアに関心のある企業数社から相談を受けている」と明かす。
実際、関西方面の企業が新横浜に拠点を設置する動きもみられる。2022年には京都府長岡京市に本社を置く半導体メーカー、ヌヴォトンテクノロジージャパンが東京など関東圏の拠点を新横浜に集約した。品川駅や東京駅周辺に比べオフィス賃料が割安なのも強み。「関西方面への『玄関口』として企業誘致を強化する」(横浜市経済局)
新横浜駅周辺は横浜アリーナや日産スタジアムがあり、スポーツ観戦や音楽ライブ、国際会議、見本市なども盛んに開かれている。SNS(交流サイト)では新線により「行きやすくなった」「待っていた」と歓迎の声も広がる。
現在、横浜市による市営地下鉄ブルーラインの延伸計画も進行中だ。あざみ野駅から小田急線新百合ケ丘駅付近(川崎市)まで約6.5キロメートル延伸する計画で、30年の開業を目指している。同線新横浜駅へ、川崎市北部や東京都の多摩地区からも行きやすくなる見込みだ。
長年、地元関係者などと調整が難航していた駅南側の「篠原口」でも再開発計画がようやく動き始めた。横浜市は2月、約3.5ヘクタールのエリアに高層のオフィス・商業ビルや集合住宅などを建設するとした新たなまちづくり計画案を公表した。
今後、住民との協議を経て都市計画決定を目指す。新型コロナウイルス禍でオフィスや通勤などのあり方は変化しており、新しいライフスタイルに合わせた開発につなげられるかどうかが今後の発展のカギとなりそうだ。
(二村俊太郎)