Nikkei Online, 2023年10月10日 16:29
全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は10日、銀行間送金システム「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」で発生した送金障害で「バックアップ手段で振込取引の処理を実施している」と発表した。完全復旧のめどは午後6時時点で立っていない。送金の遅延などの影響は大手行で延べ300万件規模にのぼりそうだ。
システムの不具合が発生したのは三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行、山口銀行、北九州銀行、もみじ銀行、日本カストディ銀行、JPモルガン・チェース銀行、商工組合中央金庫の11金融機関。他行宛ての振り込みや他行からの着金ができなくなっていた。
障害が起きたのは全銀システムと各金融機関を結ぶ「中継コンピューター」だ。中継コンピューターは各金融機関などにあり、全銀システムが運用する。7〜9日の3連休中に14金融機関を対象に切り替え作業を実施したが、このうち11金融機関で不具合が起きたという。
振り込み手続きを既に受け付け済みの送金は、バックアップを使って10日中の着金を目指す。障害の原因は調査中で、完全復旧の見通しは立っていない。11金融機関では銀行間の振り込みだけでなく、証券口座への出入金にも影響が出ている。
全銀システムは平日午前8時半から午後3時半まで稼働する「コアタイムシステム」と、それ以外の時間に対応する「モアタイムシステム」で構成される。不具合が発生した銀行によれば、今回の障害で影響が出たのはコアタイムのみだという。三菱UFJ銀やりそな銀などでは、モアタイムの時間帯に送金できるようになった。
10日は他の日に比べ事業会社の決済が集中する「5・10日(ごとおび)」にあたり、決済件数は通常の2〜3倍におよぶともされる。同日中に入金できなけば、代金の支払いなど企業間の商取引に大きな影響が出る可能性があった。
企業や個人同士の決済の根幹となる全銀システムで顧客取引に影響が出る障害が起きたのは1973年の稼働以来初めて。