Nikkei Online, 2023年11月6日 18:12
銀行間送金網「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」で10月に発生した障害を巡り、システムを構築するNTTデータは6日、同社製ソフトウエアの不具合が原因だったと認めた。ソフトが銀行間手数料の処理データを誤って作成したという。今回の障害を受け、全銀システムの開発工程全体を再点検する。
同日の決算説明会でNTTデータグループの本間洋社長は「預金者、金融機関ならびに関係者の皆様にご迷惑、ご心配をおかけし、深くおわび申し上げる」と陳謝した。同社は金融庁から11月末を提出期日とする報告徴求命令を受けており、不具合を見逃した根本的な原因の解消や抜本対策の整備を急ぐ。
全銀システムは全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が運営しNTTデータが構築や運用を担う。
10月7〜9日の3連休で全銀ネットとNTTデータは全銀システムと金融機関をつなぐ「中継コンピューター(RC)」を新機種に置き換えた。障害は同機種で10日朝から2日にわたって発生した。三菱UFJ銀行やりそな銀行など10の金融機関で計約255万件、受け取りを含めると500万件超の送金が滞った。
NTTデータによると原因は、RC上で金融機関名を検索するためのデータを自動的に作成する同社製ソフトの不具合だ。RCの起動後、ソフトが欠陥があるデータを作成した。送金時に適正な手数料を入力したり、受け取り時にチェックしたりする別のソフトウエアも欠陥データをそのまま読み込んでしまい、RC全体の停止につながった。
「ソフトの不具合が開発のどの段階で発生したのか、なぜ試験をすり抜けてしまったのかなどを詳細に検証する」と、11月6日の全銀システムの障害に関する説明会でNTTデータの佐々木裕社長は語った。
「検証結果を踏まえ、改めて説明の場を設けることも全銀ネットと協議している」(佐々木社長)という。システム改修時期についても協議の上で検討する。
今回の障害について金融機関は損害を被った利用者の負担費用を補償する方針を示している。NTTデータによる賠償金の負担の有無や度合い、業績影響について、佐々木社長は「現時点では見通せていない。まずは再発防止策立案に注力し、その後で全銀ネットと検討する」と述べた。
NTTデータグループは、同社が構築・運用に携わる全銀システム以外の重要システムの不備についても広く調査する。10月30日に本間社長を総責任者とする「システム総点検タスクフォース」を立ち上げた。金融機関だけでなく官公庁や大手企業など向けの大規模システムを主な対象とする。