Nikkei Online, 2025年7月21日 15:16更新
石破茂首相(自民党総裁)は21日、東京・永田町の自民党本部で記者会見を開いた。20日に投開票した参院選では与党が過半数割れの大敗を喫した。首相は米国との関税交渉や物価高への対応のために「政治を停滞させない」と述べ、続投する意向を正式に表明した。
首相は会見の冒頭「参院選で自民党は厳しい国民の審判をいただいた」との評価を示した。「自民党、公明党の多くの有為な同志が議席を得られなかったことは痛恨の極みだ。党総裁として心より深くおわび申し上げる」と陳謝した。
結果について「謙虚に真摯に受け止めなければならない」と述べた。「厳しいなか多くの支えをいただき、比較第1党という議席をちょうだいした。ありがたいことだ」とも話した。
米国の関税措置や物価高、自然災害、安全保障環境などを挙げ「いま、最も大切なことは国政に停滞を招かないことだ」と強調した。「選挙結果に対する重大な責任を痛感しながらも、政治を停滞させないよう比較第1党としての責任、国家・国民への責任を果たしていかなければならない」と続投する意向を改めて示した。
公明党の斉藤鉄夫代表との会談で「引き続き自民党は公明党と連携して政権運営に当たっていきたいと確認した」と明らかにした。「公明党以外の他党とも真摯な議論を通じ、新たな政治のあり方について一致点を見いだしたい」と述べた。
8月1日に期限を迎える日米関税交渉について「日米双方に利益となる合意を実現する」と従来と変わらない考えを説明した。「私自身もできる限り早期にトランプ大統領と直接話をしたい」と語った。中小企業の資金繰り支援など追加の対策を講じると表明した。
対米交渉が停滞していることに関して自身や交渉担当の赤沢亮正経済財政・再生相の進退を問われ「たらればの議論をするつもりはない」と答えた。「国益を最大限に実現すべく全力を挙げている。一方だけが得をして一方だけが損をすることは交渉の成果物として成り立たない」と主張した。
物価高への対応として「賃上げを進めるとともに、今回の選挙戦での議論を踏まえ、財政に対する責任も考えながら党派を超えた協議を通じて考えていく」と主張した。衆参両院で少数与党となる状況について「これから先はまさしくいばらの道だ。より真摯に、他党との議論を踏まえ国政にあたる」と言明した。
連立の拡大の可能性について問われ「現時点において、枠組みを拡大するという考え方を持っているわけではない」と否定した。
参院選の結果を受けた党や内閣の人事については明言しなかった。「現時点で人事について考えを持っているわけではない」と述べるにとどめた。9月の党役員の任期を念頭に対応すると説明した。
党内からの退陣要求について「国を思い、党を思っての発言だ。自らの利益を考えてという人はいない」と語った。両院議員懇談会などを設けて国会・地方議員の声を丁寧に聞く考えを示した。
首相は2007年の参院選で大敗した直後の党会合で、当時の安倍晋三首相の責任を追及した。「続投するのであればそれはなぜか説明いただき、党員、国民の広い理解をいただくことが必要だと申し上げた」と振り返った。「私も今、そのことを思い起こしながら発言している」と説明した。
参院選の敗因について「政治改革の問題、物価高や外国人への対応など多岐にわたる」との見方を示した。自民党は幅広い国民政党だとしたうえで「エッジの効いた政策を提示することは難しいこともあったのかもしれない」と言及した。「党のなかで真摯に早急に分析し、教訓を得ていきたい」と語った。
立憲民主党が導入を訴える「給付付き税額控除」について「お困りの方に早く手厚い形で支援をするということにおいて一つの解である」と一定の理解を示した。現行の生活保護制度との整合性などの面で「国民の皆さまに十分なご理解を頂くに至っていない」と語り「きちんとした解を見いだす努力は必要だ」と説いた。
消費税減税では各党の主張に差があると指摘した。消費税の負担や社会保障の給付のあり方について「事実の認識を合わせないと議論はいつまでも収斂(しゅうれん)しない」と主張した。「どこで何が議論されているのかを広く国民に共有する枠組みが必要だ」との認識を示した。
他国の事例との比較や少子高齢化との関係の議論が不十分だと強調し「想定の認識の一致を図ることは政治の責務だ」と語った。