Nikkei Online, 2023年5月20日 20:49
主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)は20日、討議の成果をまとめた首脳宣言を発表した。
中国やロシアに対抗し「法の支配」に基づく国際秩序を維持するため結束を強化すると明記した。
「核兵器のない世界」を究極的な目標と位置づけ、現実的な方法で核軍縮を進めると強調した。
首脳宣言はサミットの最終日に公表するのが通例だが、今回は1日前倒しした。21日はウクライナのゼレンスキー大統領が対面で討議に加わり、ウクライナ情勢に関する協議が中心となる。G7のみでの討議がおおむね終わったことを受けて発表した。
首脳宣言はロシアによるウクライナ侵攻や中国の威圧的な行動へ対抗するメッセージに重点を置いた。前文で「G7は世界の課題に対応し、より良い未来への道筋をつけるため、これまで以上に結束する」と打ち出した。
ウクライナ侵攻のような国際法を無視した覇権主義的な行動を止められず、法に基づく国際秩序が揺らいだことへの危機感が反映された。
「ロシアの残忍な侵略戦争は国際社会の基本的な規範に反し、全世界への脅威だ」と批判した。ウクライナ支援を強化する必要があると記し、対ロ制裁強化の共同文書を出したことにも触れた。
中国に関しては国際法に反する人工島建設や頻繁な領海侵入を仕掛ける東・南シナ海の状況へ「深刻な懸念」を表明した。「力や威圧によるいかなる一方的な現状変更にも強く反対」すると訴えた。
「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」と書き込み「両岸問題の平和的解決」を促した。台湾を巡ってはフランスのマクロン大統領が「米中に追随しない」と発言したことが問題になった経緯がある。首脳宣言でG7としての立場を改めて確かめた。
半導体やレアアース(希土類)といった重要物資の輸出入を制限する「経済的威圧」への対抗策も書き込んだ。中国など特定国への依存を下げ、G7と新興・途上国で供給網を強化する枠組みを新設する方針を示した。
一方で、中国には懸念を直接伝え、対話を通じて建設的な関係を構築する用意があるとも盛った。国際的な課題で協力する必要性も強調し、ロシアがウクライナ侵攻を断念するように中国も圧力をかけるよう要求した。
G7が国際秩序を主導する力が低下したことを踏まえ、国際的な「パートナー」との協力を深める意思も示した。
南半球の国を中心とする新興・途上国「グローバルサウス」が念頭にあるが、グローバルサウスという表現は避けた。「上から目線の言葉」と受けとめる国があるためで、G7が掲げる国際秩序への理解と協力をめざすには使わない方が適切という判断があった。