Nikkei Online, 2022年4月22日 2:29更新
日本経済新聞社が21日まとめた採用計画調査(最終集計)で、2023年春入社の大卒の採用計画は22年春と比べて18.7%増となる。さらに22年度の中途採用は採用計画全体に占める比率が初めて3割を超える。デジタルトランスフォーメーション(DX)や脱炭素の需要が加速し、各社は即戦力である中途採用を重視する傾向を強めている。
主要企業5010社に採用計画を聞き、4月4日までに未確定とした企業も含め2369社を集計した。大卒の採用計画は22年春比で18.7%増の11万6425人と、前年の4.4%増から大きく増加。高卒などを含む新卒の合計は15万1447人で17%増となる。
中途採用の6万6384人については採用計画全体(新卒と中途の合計)に占める比率が30.5%となり、比較可能な08年度以降で初めて3割を超える。17年度までは10%台だったが、その後急激に伸び、新型コロナウイルス下でも勢いが続いている。
中途採用の伸び率は21年度比で23.5%増え、過去最高となる。新型コロナ下の21年度でも16%と高かったが20%を超えるのは22年度が初めて。
職種別に中途採用の伸び率をみると、技術系が37.1%増、事務・営業系は14.7%増となる。技術系については製造業が38%増、非製造業が36.7%増と、いずれも高くなっている。
テレワークの定着などもあり、業務のDXは加速している。必要なスキルが目まぐるしく変化するデジタル職種では、新卒の育成よりも中途採用による即戦力の確保に軸足を移す動きも広がっている。若い世代には転職をためらわない志向が強まっており、離職者を充足するため中途採用を強化している側面もある。
業種別では製造業が28.6%、非製造業が21.6%それぞれ中途採用を増やす。顧客のDX支援事業を進める日本IBMグループは、前年度比1.7倍の890人を採用する方針。採用計画数は製造業で2位だ。日立製作所やソニーグループも100人程度増やす。
世界的な脱炭素の潮流も中途採用の需要を押し上げる。二輪車の電動化対応を急ぐヤマハ発動機は8割増の170人、ミネベアミツミグループは6割増の約420人を見込む。農機の省エネ化などを進めるクボタも520人の採用を計画する。23年春の新卒採用計画(510人)を上回る水準だ。「自動運転やカーボンニュートラルへの対応など、次世代農機や建機の研究開発にかかわる人材が必要」(同社)
一方で技術人材の需給ギャップは大きい。経済産業省の推計ではIT(情報技術)人材 は30年時点で最大79万人不足する。22年春入社の理工系大卒人材でも、採用計画の充足率は全業種平均で9割にとどまる。人材の争奪戦が激しくなる。
日本総合研究所の山田久副理事長は「製造業中心に企業の財務状況は悪くない。成長のために組織を変革したいという企業の意欲は強く、それが積極的な採用につながっている」と指摘する。
もっともリスク要因もある。新型コロナウイルスの感染再拡大やウクライナ情勢、為替の円安などで景気が減速した場合、企業が採用の抑制に動く可能性もありそうだ。