Nikkei Online, 2022年5月7日
三菱UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクは新卒に偏った採用活動を見直す。2022年度の中途採用は3メガの合計で前年度比8割増やす。金融サービスのデジタル化や犯罪対策、気候変動対策など即戦力の専門人材を強化する。労働市場が流動化し、新卒を一括採用して様々な部署を経験させながら育てる手法が変わりつつある。
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22年度の3メガの中途採用は合計で約360人になる見通し。三井住友銀行は2倍の100人程度に増やす。三菱UFJ銀行とみずほフィナンシャルグループも同程度かそれ以上に中途採用を増やす。
日本経済新聞社が4月にまとめた主要企業の採用計画調査によると、22年度の中途採用は全体で23.5%増える。3メガの中途採用の伸び率はこれを大きく上回る。3メガの採用全体に占める中途の比率は1割前後で推移してきたが、2割超まで上昇する。
三井住友はIT(情報技術)やマーケティングなどの人材の確保を急ぐ。三菱UFJはマネーロンダリングをはじめとする金融犯罪への対策、脱炭素といったサステナビリティー(持続可能性)関連などで専門人材を増強する。みずほは営業やコーポレート部門も含めて幅広い人材を集める。
一方、新卒採用は減少の一途をたどる。直近のピークだった15年度は3メガバンク合計で新卒を5000人超採用していたが、21年度は1200人台に減少。22年度の採用計画は1100人となる。支店の統廃合や店舗事務の効率化を背景に3メガの総人員は減る方向にあるなか、中途を増やしてサービスのデジタル化などを強化する。
もっとも人材の活用では米銀に後れを取る。JPモルガン・チェースは社内に5万人超のエンジニアを抱え、約25万人の社員の約5人に1人がエンジニアだ。一方、社員数約14万人の三菱UFJフィナンシャル・グループのIT人材は約4000人にとどまる。3メガがデジタルサービスの開発力などを高めるには、一時的ではなく継続して中途を増やしていく必要がある。
銀行では新卒での入行年次が重視されてきた。中途と新卒の割合の変化は、こうした銀行文化にも変化をもたらす可能性がある。あるメガバンクの人事担当者は「飛び級や降格などの人事制度の導入もあり、『新卒・年次主義』からの脱却は始まりつつある」と話す。
(北川開)