Nikkei Online, 2025年9月5日 9:34更新
【ワシントン=八十島綾平】トランプ米大統領は4日、日米の貿易合意に関する大統領令に署名した。米ホワイトハウスが発表した。現在25%の自動車関税の税率を12.5%に下げ、既存の税率2.5%と合わせた税率を計15%にすることを盛り込んだ。自動車関税の引き下げは7月に日米で合意し、日本側が早期実施を求めていた。
大統領令の内容が連邦官報に掲載されてから7日以内に詳細が示される。税率引き下げの時期について、訪米中の赤沢亮正経済財政・再生相が「今から2週間かかることはないだろう」との見通しを述べた。米首都ワシントンで4日に開いた記者会見で語った。
トランプ氏は「日本産」の自動車であることを判定するためのルールを新たにつくる方針も示した。既存税率が15%以上の小型トラックや部品などは自動車関税を免除することも明記した。
相互関税の負担軽減措置を日本に適用することも盛り込んだ。既存の税率と合わせて15%が上限になるようにする。既存の税率が15%以上の品目には相互関税を適用しない。欧州連合(EU)に適用した負担軽減措置と同じとなる。
相互関税の負担軽減措置は、新税率が発効した米東部時間8月7日に遡って適用する。徴収しすぎた分の相互関税は還付する。
トランプ米政権は、日本産のジェネリック医薬品やその原料の税負担を、将来的に0%にする方針も大統領令に盛り込んだ。日本製の航空機や航空機部品にかかる鉄鋼・アルミニウム関税や銅関税も近く免除するとした。
日米で合意していた米国への5500億ドル(約80兆円)規模の投資も盛り込んだ。「米国史上、ほかのどの合意とも異なる重要な点だ」としたうえで、投資先は「米国政府によって選ばれる」と強調した。
赤沢氏とラトニック米商務長官は4日、米商務省内で日米が合意していた対米投資に関する覚書に署名した。ラトニック氏は署名にあたって「今日は歴史的な日だ。覚書に署名することで、取引を完了する」と述べた。
赤沢氏は署名後に米首都ワシントンで記者会見を開き、対米投資について「7月の合意は何ら変わっていない。投資・融資・融資保証を上限5500億ドル(約80兆円)で提供する」と説明した。「日本にとってもメリットのあるものを国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)が支援する」とも述べた。
大統領令には米国産のコメの輸入に関する記載も書き込んだ。日本が関税ゼロのミニマムアクセス(MA)米制度の「枠内」で、米国産コメの輸入を75%増加させるとした。
現在MA米の総量77万トンのうち、米国産コメは約35万トンを占めている。これが75%増えた場合、単純計算だと約60万トンとなる。タイ産などからの振り替えが必要になるとみられる。
米国側は7月に公表した「ファクトシート」で示した内容も大統領令に盛り込んだ。日本が大豆やトウモロコシ、バイオエタノールなど農産品を年80億ドル相当輸入するという記載もある。
大統領令は、米国の安全認証を受けた自動車を、日本側が追加試験なしで輸入・販売できるようにすることや、米国製の民間航空機や防衛装備品を日本が購入することにも触れた。