Nikkei Online, 2023年2月23日 0:00
天皇陛下は23日、63歳の誕生日を迎え、これに先だつ記者会見に皇居・宮殿の「石橋の間」で臨まれた。陛下は宮内記者会があらかじめ提出した5つの質問と、その関連質問に答えられた。主なやりとりは以下の通り。
問1 陛下はこの1年、即位後初の外国訪問としてイギリスを訪れ、エリザベス女王の国葬に参列したほか、およそ3年ぶりに地方訪問を再開されました。本土復帰50年を迎えた沖縄では、遺族や若い世代の人たちと交流される機会もありました。訪問先で印象に残ったことをエピソードとともにお聞かせください。ウィズコロナが進む中、今年の活動のあり方についても考えをお聞かせください。
陛下 新型コロナウイルス感染症の状況は、まだ収まっているとは言えないと思いますが、そのような中にあって、昨年の秋に感染状況を見ながら栃木県を日帰りで訪問したのを皮切りに、地方への訪問をほぼ3年ぶりに再開することができました。コロナ禍にあっては、国民の皆さんと直接触れ合うことが難しくなったことを私も雅子も残念に思っていましたので、この1年、都内においても様々な行事が再開され、また、地方への訪問も行うことができ、皆さんと直に会ってお話ができるようになったことは、私たちにとっても、とても嬉(うれ)しいことでした。地方への訪問に当たっては、専門家の方の意見を伺うなど、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策に気を配りながら、関係者の皆さんが念入りに準備を進めていただいたことを有り難く思うとともに、現地では、沿道を含め、たくさんの方々に温かく迎えていただいたことを、雅子と共に大変嬉しく思っております。10月に栃木県で行われた国民体育大会の開会式に出席した際には、全国各地から参加した選手や関係者が3年ぶりに大会に参加できる喜びを分かち合っている様子を嬉しく思いましたし、また、炬火(きょか)リレーの走者が炬火を持って入ってくる様子に、コロナ禍の中でも国体が無事に開かれたことを実感いたしました。11月の全国豊かな海づくり大会に際して訪問した兵庫県で、神戸空港に向かう機内や訪問先に向かう車窓から、神戸を始(はじ)めとする街並みなどが美しく眺められ、阪神・淡路大震災からの復興が人々のたゆみない努力により進められていた様子を感じ、印象に残りました。その一方で、28年前の震災で被災された方々の中には、今なお困難な状況にある高齢者なども多くおられることを兵庫県知事からお聞きし、こうした方々にも、引き続き心を寄せていきたいと思っています。また、今回、豊かな海づくり大会での魚の放流行事を初めて経験しましたが、漁業に携わる皆さんが、美しく彩られた大漁旗を掲げた船に乗り、誇らしげに手を振っている姿や、式典と放流行事を通じて、地方の高校生やオーケストラの演奏をした全国の子どもたちの活躍が印象的でした。
昨年は、沖縄の本土復帰から50周年という年に当たり、5月の沖縄復帰50周年記念式典にオンラインで出席するとともに、東京国立博物館や国立公文書館での特別展を訪れるなど、雅子と共に改めて沖縄の歴史や文化についての理解を深める機会を持つことができました。そして、10月には、国民文化祭及び全国障害者芸術・文化祭に際して、雅子と一緒に沖縄県を実際に訪れることができたことを嬉しく思いました。沖縄県では、沖縄戦における御遺族の方々のお話を直接伺い、お一人お一人の御苦労や悲しみに思いを致しました。激しい地上戦となった沖縄戦の悲惨さや、沖縄の人々がたどった苦難の歴史に思いを巡らせ、犠牲となられた方々の御冥福をお祈りし、それとともに、現在、私たちが享受している平和の有り難さを思い、改めて平和の大切さを深く心に刻みました。そして、今回の訪問では、沖縄の歴史や文化に直接触れることができました。また、平成28年に東宮御所に来てくれた若い豆記者の皆さんとも再会することができ、皆さんが立派に成長されていることをとても嬉しく思いました。これからも、沖縄がこれまでたどってきた道のりを見つめ直し、沖縄の地と沖縄の皆さんに心を寄せていきたいと思います。日本、そして世界の平和を祈る気持ちを大切にしていきたいと思います。
昨年9月には、英国で70年の長きにわたって在位されていた女王エリザベス2世陛下が崩御され、御葬儀に参列するため、雅子と共に英国を訪問しました。御葬儀では、厳粛な儀式が執り行われる中、英国王室の方々や各国元首を始めとする参列者の方々と御一緒に、女王陛下が長年の間に残された数多くの功績と貢献に思いを馳(は)せるとともに、我が国との関係においても、女王陛下が両国の関係を常に温かく見守ってくださったことに心からの敬意と感謝の気持ちを新たにしつつ、深い哀悼の気持ちを持って女王陛下に最後のお別れをいたしました。女王陛下には、私の英国留学や英国訪問に際しても、様々な機会に温かく接していただき、幾多の御配慮を頂いたことに重ねて深く感謝しております。それとともに、令和になって、国賓として、御招待を頂きながら、コロナ禍により、女王陛下の御存命中に訪問を果たせなかったことを残念に思います。今回の訪問に当たっては、チャールズ3世国王陛下を始め英国王室の方々や、英国政府関係者、一般市民の皆さんに温かくお迎えいただいたことを大変有り難く思っています。
この1年も、新型コロナウイルス感染症が引き続き社会に大きな影響を与えました。亡くなられた方々とその御遺族に心からお悔やみをお伝えするとともに、闘病中の方や後遺症に苦しまれている方々にお見舞いをお伝えします。その中にあって、患者さんの命を救うための尽力を続けている医療従事者、救急隊や保健所などの関係機関の皆さん、人々の日々の暮らしを支えていただいているエッセンシャルワーカーなどの皆さんに、改めて心からの感謝の気持ちを伝えたいと思います。コロナ禍においては、多くの人々、特に社会的に弱い立場にある人々が、様々な困難を抱えながら生活をしていることに胸が痛みます。社会的な孤独・孤立の問題についても心配しています。今後とも、生活に困窮している人々やその子どもたちなど、社会的に弱い立場にある人々に、心を寄せ続けていきたいと思います。新型コロナウイルス感染症の感染状況は、現在少しずつ落ち着きを見せつつあるようにも見受けられますが、今後の活動に当たっては、その時々の感染状況に十分注意を払いながら、必要な感染対策を取りつつ、オンラインも活用しながら、様々な形で広く国民の皆さんと接することができればと思っています。
問2 両陛下は今年6月に結婚30年を迎えられます。これまでの歩みを振り返り、皇后さまへの思いや回復の状況についてお聞かせください。成年を迎えられた愛子さまは、昨年3月、初めての記者会見に臨まれましたが、どのようにご覧になりましたか。愛子さまの大学生活や成年皇族としての活動、今後の進路やご結婚についての考えをお聞かせください。
陛下 結婚してから、30年近くが経(た)つのかと思うと、時の流れの速さを感じます。昨年12月の雅子の誕生日の感想にもありましたが、雅子が29歳半の時に結婚してから、その人生の半分以上を私と一緒に皇室で過ごしてくれていることに、心から感謝するとともに、深い感慨を覚えます。この30年近く、二人で一緒に多くのことを経験し、お互いに助け合って、喜びや悲しみなどを分かち合いながら、歩んでまいりました。雅子は、この1年も工夫や努力を重ね、体調を整えながら、皇居での行事、都内での式典やオンラインによる各地への訪問、そして昨年10月以降は、栃木県、沖縄県並びに兵庫県へと、再開された地方への訪問に臨むことができました。また、突然の英国訪問となった昨年9月の英国女王エリザベス2世陛下の御葬儀への出席は、時差が大きく長時間のフライトとなるなど厳しい日程だったと思いますが、二人でそろって参列できたことに安堵いたしました。この1年は、コロナ禍の状況も少し落ち着き、その前の年に比べ、出席する行事も増えましたし、養蚕についても、コロナ禍に入ってからの態勢から蚕の種類や頭数を増やすことができ、伝統を引き継ぎながら、熱心に作業に取り組んでいます。そのような中で本当によくやってくれていると思います。ただ、雅子は、いまだに快復の途上で、体調には波があり、大きな行事の後や行事が続いた場合には、疲れがしばらく残ることもあります。そのような際には、十分な休養を取ってほしいと思います。これからも、無理をせずにできることを一つ一つ着実に積み重ねていってほしいと思います。雅子は、私の日々の活動を支えてくれる大切な存在であるとともに、公私にわたり良き相談相手になってくれていますし、愛子の日常にもよく気を配りながら見守っており、生活に安らぎと温かさを与えてくれていることもとても有り難く思っております。私も、今後ともできる限り力になり、支えていきたいと思っています。国民の皆様には、これまで温かく心を寄せていただいていることに、改めて感謝の気持ちをお伝えするとともに、引き続き雅子の快復を温かく見守っていただければ有り難く思います。
また、愛子は、大学生として学業を優先していますが、そのような中で、皇居での新年の行事であったり、都内の訪問であったり、少しずつ皇室の一員としての活動を行うようになりました。また、昨年3月に、成年を迎えての初めての記者会見に臨みましたが、私たちも、会見に向けて一生懸命準備をする様子を目にしていましたので、無事に会見を終えることができ、安堵いたしました。愛子が記者会見でも述べたように、自身のこれまでの経験は周りの多くの方の支えや協力があったからであり、これまで様々な形で支えていただいた皆さんに感謝する気持ちを持ってくれていることを、私たちとしても嬉しく思いました。今年度も、新型コロナウイルス感染症の影響により、授業はほぼ全てオンラインでの出席となりました。演習の授業での発表や、授業の課題に日々取り組むなど、大学での勉学に一生懸命励んでいます。早いもので、この4月から愛子も4年生になります。新型コロナウイルス感染症の感染状況が落ち着いて、キャンパスに足を運べるようになり、これまで以上に広い経験を積んでくれればと思っています。愛子は、学業で忙しい日々を送りつつも、いつも楽しい話題で家庭の雰囲気を和ませてくれ、私たちの生活を和やかで楽しいものにしてくれています。昨年も述べましたとおり、愛子には、いろいろな方からたくさんのことを学び、様々な経験を積み重ねながら視野を広げ、自らの考えを深めていってほしいと願っています。また、今後も、思いやりと感謝の気持ちを持ちながら、皇室の一員として一つ一つの務めを大切に果たしていってもらいたいと思います。その過程で、私たちで相談に乗れることは、できる限りしていきたいと思います。皆様には、これまでも愛子に温かい気持ちをお寄せいただいていることに、心から感謝しております。今後とも愛子を温かく見守っていただければ幸いです。
問3 宮内庁は新年度、皇室の情報発信を強化する方針で、SNSの活用についても検討するとしています。これに関連し、秋篠宮さまは昨年の会見で、「正確な情報をタイムリーに出していくということが必要である」との見解を示されました。情報発信を強化し、皇室の活動をより広く国民に知ってもらうことの意義について、陛下のお考えをお聞かせください。
陛下 皇室の活動についての情報発信を考えるに当たっては、その前提として、皇室の在り方や活動の基本に立ち返って考える必要があると思います。皇室の在り方や活動の基本は、これまでもお伝えしているとおり、国民の幸せを常に願い、国民と苦楽を共にすることであると思います。そして、時代の移り変わりや社会の変化も踏まえながら、状況に応じた務めを果たしていくことが大切であると思います。皇室を構成する一人一人が、このような役割と真摯に向き合い、国民の幸せを願いながら一つ一つの務めを果たし、国民と心の交流を重ねていく中で、国民と皇室との信頼関係が築かれていくものと考えております。国民との交流を重ね、国民と皇室の信頼関係を築く上では、皇室に関する情報を、適切なタイミングで国民の皆さんに分かりやすくお知らせしていくことも大事なことであると考えます。
問4 陛下は昨年、前立腺の詳しい検査を受けられましたが、検査結果の受け止めと現在の健康状態、日常生活で気をつけていることについてお聞かせください。昨年は上皇さまが右心不全、上皇后さまが深部静脈血栓症と診断され、年末にはお二方とも風邪で療養されることもありました。上皇ご夫妻の体調についての受け止めと、最近のご様子についてお聞かせください。
陛下 検査については、発表のとおり、前立腺の肥大は認められましたが、そのほかの異常は認められませんでした。皆さんには、御心配を頂いたことを有り難く思っております。今回の検査は、血液検査の数値に気掛かりな点があったことを受けてのことでしたが、改めて検査の大切さを感じました。検査に当たっていただいた医師や看護師を始めとした関係者の御尽力に感謝いたします。おかげさまで、私は日々変わりなく過ごしていますが、務めを果たす上で健康を維持することは大切なことだと思いますので、できる限り健康な生活を心掛けるよう努めています。体を動かすことも良いことと思いますので、定期的に皇居内をジョギングしたり、雅子と散歩をしたりしています。ジョギングは、時折愛子とすることもあります。皇居に移ってからも、雅子と愛子と三人でテニスをしたこともあります。
上皇上皇后両陛下には、日頃より、私たちや愛子を温かくお見守りいただいていますことに感謝しております。上皇上皇后両陛下は、昨年、赤坂の仙洞御所に御移居になり、また、上皇陛下には一昨年、上皇后陛下には昨年、米寿になられたことをお慶(よろこ)び申し上げます。上皇上皇后両陛下には、昨年、御体調についての御指摘のようなこともおありでしたが、昨年10月の上皇后陛下のお誕生日、12月の上皇陛下のお誕生日と雅子の誕生日には、雅子と二人で、そして、今年の正月には愛子と共に三人で、両陛下にそろってお会いできたことを嬉しく思っております。くれぐれもお体を大切になさり、末永く健やかにお過ごしになりますよう心より願っております。
問5 この1年は、物価の高騰や国際的な紛争、また地球規模の自然災害など、国内外で様々な出来事がありました。この1年を振り返って印象に残っている出来事をお聞かせください。
陛下 コロナ禍や最近の物価高などにより、多くの人々が様々な困難を抱えながら生活しており、支援を必要としているお年寄りや障害のある人、生活に困窮している人やその子どもたちなど、社会的に弱い立場にある人々が様々な苦労をしていることに心が痛みます。同時に、このような社会的に弱い立場にある人々を支え、その命と暮らしを守るために力を尽くしている人々が多くいることは心強く、有り難いことと思っています。大変なことも多い中ではありますが、人々が、これからもお互いを思いやりながら支え合い、困難な状況を乗り越えていくことができるよう願っています。
この1年も、地震や台風、大雪などの自然災害が国内各地で発生しました。災害により、亡くなられたり、被害に遭われたりした方や大雪の除雪作業中に亡くなられたりした方もおられることは痛ましいことです。亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに、御遺族と被災された方々に心からお見舞いをお伝えいたします。
自然災害に関して言えば、今年は、関東大震災発生から100年を迎えます。日本では、古くは日本書紀に地震の記録があり、平安時代には三陸沖を震源とする貞観地震が発生した記録が残っているように、以前から大きな地震が繰り返し起こっています。平成23年に発生した東日本大震災は私たち一人一人の記憶に新しいところです。この東日本大震災では2万人を超える数多くの方が亡くなったり、行方不明になったりしました。今なお、多くの人々が困難を抱えた状態にあるなど、本当の意味での復興はまだ道半ばにあり、復興が更に進むことを心から願っております。地震を始めとする自然災害は、いつ起こるかは分からないものの、これまでも繰り返し起こってきたことを忘れずに、これまでの災害から得た知識や教訓を将来に活(い)かしていくことが大切だと思います。
地球規模でも、地震や水害などの大きな自然災害が起きています。今月発生したトルコ南東部を震源とする地震では、報道によれば、4万7000人を超える大変多くの人が亡くなっています。また多数の建物が倒壊し、道路も各所で寸断されるなど、広範囲にわたって甚大な被害が発生し、住む家を失った多くの人々が凍えるような寒さの中で厳しい避難生活を余儀なくされており、被災地の悲惨な状況に深く心を痛めています。ここに改めて、この度の地震により犠牲になられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方々にお見舞いをお伝えします。東日本大震災の際には、トルコを含め、世界中の国や地域から、多くの支援が届けられました。今回も、日本から国際緊急援助隊・医療チームが派遣されるなど、世界中から多くの支援が届けられていると聞いています。世界中の人々の協力により、被災された方々の救済が一刻も早く進むとともに、被災地の人々の心が復旧・復興に向けた希望へとつながっていくことを願ってやみません。また、昨年、パキスタンでは、大規模な洪水災害により国土の約3分の1が水に浸かり、全人口の約15パーセントに当たる3300万人が被災するなど、気候変動による洪水や干ばつによる被害も、世界各地で深刻化しているように感じます。今後、自然災害の被害を減らし、人々の命や暮らしを守っていく、そして、持続可能な世界を築いていくためには、世界中の人々が知恵を出し合い、協力していくことがより一層必要になっていると感じます。
先ほどお話ししたとおり、昨年、本土復帰から50年の年に訪れた沖縄県では、先の大戦での沖縄戦で亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、苦難の道を歩んできた沖縄の人々の歴史に思いを致しました。そして、再び戦争の惨禍が起こることのないよう、平和の大切さを改めて心に刻みました。しかしながら、世界に目を向けると、現在も各地で戦争や紛争などが発生し、多くの人々が亡くなり、傷つき、あるいは住む家を失い、恐怖や悲しみの中にいます。また、世界中で飢餓や貧困、抑圧や偏見などに苦しみ、人としての尊厳や生命が脅かされている人々もいます。世界が直面するこうした困難な現実に、深い悲しみを覚えます。全ての人々が悲しみや苦しみから解放され、平和に暮らすことができる世界を作っていくためには、国際社会において、いずれの国も自国のことのみを考えるのではなく、ほかの国々とも互いの違いを乗り越えるべく対話を重ね、協力しながら問題を解決していくことの大切さを強く感じます。また、私たち一人一人が平和な世界を実現するために何ができるのか、改めて問われているのではないかと感じます。1990年代に国連難民高等弁務官を務められた緒方貞子氏は、日本社会が前進するためにとして、「世界の多様な文化や価値観、政治や社会に目を開いて、そこから何かを学びとること、それとともに、国内でも多様性を涵養(かんよう)していくことが不可欠です。」と述べておられます。このことは、今後の平和な世界を築いていく上でも大切な示唆ではないかと思います。
この1年もスポーツの世界では明るい話題がいろいろあったと思います。昨年2月に北京で開催された冬季オリンピック・パラリンピック大会では多くの日本人選手が活躍しました。そして、11月のサッカーワールドカップ・カタール大会では、森保一監督率いる日本代表が、強豪国を相手にチーム全員が一つになって勝利し、決勝トーナメントに進み、過去最高に並ぶ9位となるなど、輝かしい活躍をしたことは記憶に新しいところです。また、今回の大会でも、観客席の清掃を行う日本サポーターの姿に称賛の声が寄せられ、大会組織委員会から表彰されたことも、印象に残る出来事でした。車いすテニスでは、先頃引退を表明した国枝慎吾選手のこれまでの活躍に目を見張るものがあったことも印象に残っています。将棋の世界では、藤井聡太さんが、昨年、五つ目のタイトル「王将」を獲得し、史上最年少の10代での「五冠」を達成しました。これらのことは、コロナ禍などにより、多くの人々が様々な困難を抱えながら生活している中で、たくさんの人々に大きな感動や、明るい希望を与えてくれるものと思います。こうした若い人々が日々の努力を積み重ねながら、新たな世界を切り拓(ひら)いていく姿が見られることを今後とも楽しみにしております。
関連質問1 この度はお誕生日、おめでとうございます。3問目の皇室の情報発信に関連してお伺いいたします。先ほど陛下は、皇室に関する情報は、適切なタイミングで分かりやすく発信することも大事だとおっしゃられました。この分かりやすく発信するということに関して、具体的にイメージされていることですとか、アイデアがありましたらお聞かせください。また、海外の王室などで発信されている事例などで、何か参考になったり、日本の皇室でも取り入れてもよいのではないかと思われるような出来事がありましたら、そちらも併せてお聞かせください。
陛下 今、御質問のあった件については、今現在、宮内庁でもいろいろと検討が進められていると思います。ですから、これは宮内庁の今後の対応に任せたいというように思っております。また、海外でもいろいろな王室の方々がSNSを使ったりして情報発信しておられることは、私も承知しております。恐らくその国々にあった形で、それぞれ発信をしておられることだと思いますけれども、この辺も宮内庁の方でもいろいろと情報を集めているのではないかというように思っております。
関連質問2 沖縄の昨年の行幸啓に関連し、陛下にお尋ね申し上げます。私は今月、政府派遣の硫黄島戦没者遺骨収集団に約2週間加わり、戦没者2万人のうち1万人がいまだに残されたままの島の現状を見てきました。上皇様は1994年、硫黄島を訪問され「精根を込め戦ひし人未だ地下に眠りて島は悲しき」との御製を詠まれました。来年は最後の硫黄島行幸啓から30年の節目となります。沖縄と並んで激しい地上戦が行われた硫黄島の歴史や、いまだに1万人もの戦没者が残されている現状に対する陛下のお気持ちをお聞かせください。
陛下 今お話のあった、上皇上皇后両陛下が硫黄島に行かれたことについて、私も上皇上皇后両陛下から硫黄島に行かれた時の話をいろいろと伺っております。大変悲惨な戦闘が行われ、また多くの方が亡くなられたことを、私も本当に残念に思っておりますし、このような硫黄島も含めて、日本各地で様々な形で多くの人々が亡くなられている。こういった戦争中の歴史についても、私自身、今後ともやはりいろいろと理解を深めていきたいというように思っております。