米軍、中国偵察気球を大西洋上空で撃墜
 回収作業に着手


Nikkei Online, 2023年2月5日 8:19更新

米サウスカロライナ州沖の大西洋上空で撃墜された中国の偵察気球(4日)=ロイター

【ワシントン=中村亮】オースティン米国防長官は4日の声明で、米軍が南部サウスカロライナ州沖の大西洋上空で中国の偵察気球を撃墜したと発表した。気球の残骸は米国の領海内に落下し、米軍は回収作業に着手した。中国が反発し、米中対立に拍車がかかる可能性がある。

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米国防総省高官は記者団に米軍の戦闘機F22ラプターが空対空ミサイル「サイドワインダー」1発で気球を撃墜したと説明した。米軍高官は「回収作業に数カ月や数週間かかるものではなく比較的すぐにできると予測している」と語った。残骸は少なくとも7マイル(約11キロメートル)の範囲に広がっているという。

国防総省高官は「気球や(気球に積んでいた)装置を研究して精査できる。価値のあるものだ」と述べ、中国の情報収集能力や技術力を分析する考えを強調した。中南米で別の中国の偵察気球が飛行していると重ねて説明し「これらの活動は中国人民解放軍の指示のもとで実施していることが多い」と言明した。

オースティン氏は声明で、バイデン大統領が1日に一般市民の生命にリスクがない状況になれば気球を直ちに撃墜するよう命じたと明らかにした。4日に気球が大西洋の上空に入り、安全が確保できると判断して撃墜に踏み切った。米軍は1日、西部モンタナ州で撃墜を検討したが、一般市民に被害が及ぶリスクがあると判断して見送っていた。

バイデン氏は4日、撃墜に先立ち、東部ニューヨーク州で記者団に偵察気球をめぐり「対処する」と述べていた。米連邦航空局(FAA)はサウスカロライナ州沖の空域を一時閉鎖し、周辺の空港の運用も停止した。

オースティン氏は気球に関し「中国が米本土の戦略的な場所を偵察しようとした」と断じた。モンタナ州には大陸間弾道ミサイル(ICBM)を運用するマルムストロム米空軍基地があり、偵察対象になっていた可能性がある。

国防総省のライダー報道官は3日の記者会見で、1日にモンタナ州を飛行した気球が東に移動して米本土の中央に位置していると説明した。気球はさらに東方へ移動し、米軍が監視を続けてきた。

気球の飛来は米中対立の新たな火種となった。バイデン政権は3日、飛来を受けてブリンケン国務長官の中国訪問を延期すると決めた。中国外務省は3日、気球について「民間の気象研究用の飛行船が航路を外れた」と主張。4日も「不可抗力による事故」と繰り返し、米国の説明と食い違っていた。

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