Nikkei Online, 2025年6月13日 7:00更新
【ワシントン=八十島綾平】トランプ米大統領は12日、日本製鉄によるUSスチール買収計画について「我々は(USスチールの)黄金株を持つ。大統領がコントロールする」と述べた。詳細については説明しなかったが、米国側がUSスチールの経営を管理する枠組みになると強調した。
12日、ホワイトハウス内で記者団に話した。関税策や自動車規制など他の事案について説明するなかで、日鉄の買収計画についても短く言及した。
黄金株について「(米国側に)完全なコントロールをもたらす」とも述べた。
黄金株は少数の持ち分でも経営の重要事項について拒否権を持つ種類株式だ。1株の保有でも、取締役の選任・解任や株主総会決議を拒否する権限を持つことができる。5月下旬、日鉄が米政府への譲渡を検討していることが明らかになっていた。
日鉄は黄金株を活用することで、USスチール買収の前提としている完全子会社化を実現しつつ、同社の経営に影響力を持ちたいトランプ政権の方針も両立できる可能性がある。日鉄がUSスチールを完全子会社化したうえで、USスチールが米政府に黄金株を発行する枠組みが考えられる。
トランプ氏は12日、米政府が黄金株を取得すると述べた直後に「米国人が51%の所有権を持つ」とも話した。黄金株を持つことが、実質的にUSスチールの経営の支配権を握ることに相当すると説明したとも解釈はできるが、詳細には触れず真意は不明だ。
トランプ氏は日鉄とUSスチールの提携を歓迎する意向を示す一方、USスチールは「米国企業として存続する」と一貫して主張している。5日までには買収を巡る最終判断を公表するとみられてきたが、期限を過ぎても判断は示されていない。
トランプ氏が日鉄の買収計画を最終承認するためには、バイデン前大統領が1月に出した買収中止命令を破棄する必要がある。日鉄は買収実現に向けて、米政府との間で「国家安全保障協定」を結ぶことが条件となる見通しだ。本社を国外移転しないことなどが盛り込まれる可能性がある。