米相互関税、上乗せ部分90日停止 対中国は125%に上げ


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Nikkei Online, 2025年4月10日 8:12更新

【ワシントン=高見浩輔】トランプ米大統領は9日午後、同日発動したばかりの相互関税の上乗せ部分について、一部の国・地域に90日間の一時停止を許可すると発表した。5日に課した10%の一律関税は維持する。日本も含まれ、即時実施される。一方で報復措置を打ち出した中国に対しては、関税を125%に引き上げる。

日本は10%、自動車関税は維持

トランプ氏が自身のSNSで明らかにした。9日の米市場は朝から株式と通貨、債券がそろって下げる「トリプル安」に陥り、米政権は発動からわずか13時間余りで軌道修正を迫られた。対応を明確に分けることで、態度を決めかねている国・地域にも報復ではなく譲歩を迫る考えとみられる。

米政権は5日に全世界からの輸入品に一律10%の追加関税を課し、9日に国・地域ごとに割り当てた上乗せ分を発動した。日本からの輸入品にかかる追加関税は合計で24%だった。交渉に応じる国・地域はこれが一律10%に戻る。計20%の関税を課した欧州連合(EU)も10%に下げる。

鉄鋼製品やアルミ、自動車など品目別に導入した関税については維持する。

トランプ氏は75カ国以上が貿易障壁や関税、通貨操作などに関して交渉を持ちかけていると明かした。一時停止は米国に対して報復措置をとっていないことが条件だとした。

株価急落、責任は中国に

中国については強硬姿勢をさらに強める。米政権は9日午前0時から中国製品に84%の追加関税を発動した。2〜3月に計20%の追加関税を課しており、累計の追加関税は104%となっていた。

これに対し、中国政府は9日、米国からの輸入品に50%の追加関税を課すと明らかにした。すでに発表している34%の報復関税に上乗せして84%の税率とする。

トランプ氏は9日午後のSNSに「中国が世界の市場に対して示してきた敬意の欠如を踏まえて関税を125%に引き上げることを宣言する」と投稿した。株価急落の原因が中国の報復措置にあると批判した。125%は2〜3月の20%を含む累計の追加関税となる。

トランプ大統領は「債券市場は美しい」と語った(9日、ホワイトハウス)=AP

トランプ氏は同日午後、ホワイトハウスで記者団の質問に応じた。修正した理由を「人々が少し行き過ぎていると思った」と説明し、不安の高まりに対応したと明らかにした。「債券市場は非常に厄介だ。だが今は美しい」と述べ、市場の安定を優先したことを示唆した。

大企業の救済も「検討する」

今後は打撃を受けた大企業への救済策も「時間が経てば検討する」と述べた。「柔軟性を持たなければならない」と強調した。

調査会社パンテオン・マクロエコノミクスによると、今回の措置により中国を除く平均関税率は22%から14%に下がる。それでも年初の3%からは引き続き大幅な引き上げになる。中国を含めた全体の関税率は17%と見込む。消費者物価を1%押し上げ、米国の経済成長率を減速させる公算が大きい。

中国にだけ極端に高い関税をかける今回の措置により、今後は中国製品をほかの国・地域を通じて迂回輸入する動きが加速する可能性もある。貿易赤字の金額をもとにしたとされる各国向けの相互関税率も批判を浴びており、政策の不安定さが目立っている。

ベッセント財務長官「日本が列の先頭」

ホワイトハウスではトランプ氏の投稿とはほぼ同時刻にベッセント米財務長官が大統領報道官とともに記者説明を行った。関税政策の説明で財務長官が前面に出るのは初めて。

ベッセント氏は政権内では穏健派とされ、日本との交渉を担当することもすでに明らかになっている。これまでの関税引き上げは強硬派のナバロ大統領上級顧問などトランプ氏の側近が主導しているとの見方があった。

ベッセント氏は「(相互関税を公表した)1週間前、トランプ大統領が実施した交渉戦略が成功した」と述べ、強硬な関税策を掲げたことで75か国が交渉の席についたと評価した。 「この瞬間まで方針を貫くには、彼にとって大きな勇気が必要だった」とも述べ、トランプ氏の交渉術のおかげだと持ち上げてみせた。 「日本が列の先頭にいる。 彼らは交渉チームを派遣するので様子を見よう」とも語った。

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