Nikkei Online, 2025年7月15日 13:00更新
【シリコンバレー=清水孝輔】米エヌビディアは14日、中国向けに設計した人工知能(AI)半導体「H20」の出荷を再開する計画を表明した。H20は米政府が4月に規制対象に加え、出荷を停止していた。エヌビディアの働きかけを受け、米政府が規制強化の方針を撤回した。
エヌビディアは14日、H20を中国に出荷するためのライセンス取得を米政府に対して申請していると発表した。「米政府がライセンス付与を保証した」と表明し、出荷を再開できるとの見通しを示した。
エヌビディアはジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)が米中両政府と会談したことを明らかにした。米国では首都ワシントンでトランプ氏と会談した。会談の具体的な内容は明らかになっていないが、輸出規制の緩和を求めた可能性がある。
ファン氏はトランプ氏との会談後、中国を訪問し北京で政府高官や企業幹部らと面会した。中国の顧客に対し、H20の早期の出荷再開をめざす考えを伝えた。エヌビディアは中国で16日から始まる「中国国際サプライチェーン(供給網)促進博覧会」にも参加し、同国企業との関係維持を狙う。
エヌビディアはH20が規制対象に加わったのを受け、2025年2〜4月期には在庫引当金などの費用として45億ドル(約6700億円)を計上していた。中国向け出荷を再開できれば、業績の押し上げ要因となる。
ファン氏は米政府に対し、対中輸出規制の緩和を求めて働きかけてきた。AIの分野で中国を含む世界に米国製の技術が普及することが国益になると訴えてきた。米政権はすでに中東など一部の国に対してはAI半導体の輸出規制を緩和していた。
中国では華為技術(ファーウェイ)などの国内企業がAI半導体を開発している。ファン氏は米規制の影響でエヌビディア製の主力品が中国市場で使えなければ、国内企業による独自AI半導体の開発が進むと警告してきた。
米政府は段階的にAI半導体の対中輸出規制を強化してきた。中国市場向けのH20は米国市場向けなどの先端品に比べると性能が低い。H20の出荷が再開しても、米規制の影響で先端品を中国で展開できない状況は続く見通しだ。