Nikkei Online, 2025年8月27日 7:27更新
【ワシントン=八十島綾平】米政府は27日、ロシア制裁の一環として同国産原油を購入しているインドに対する25%の追加関税を発動する。7日に発動した25%の相互関税に上乗せされるため、税率はブラジルと並ぶ最高水準の累計50%となる。
トランプ米大統領は6日にインドへの追加関税を命じる大統領令に署名した。国際緊急経済権限法(IEEPA)などに基づきロシア産原油の買い手に高関税を課し、間接的にロシアに停戦に向けた圧力をかける。トランプ氏はこの手法を2次関税と呼んでいる。
米税関・国境取締局(CBP)の通達によると、ロシア制裁に絡むインドへの25%の追加関税は米東部時間27日午前0時1分(日本時間午後1時1分)に発動する。
ベッセント米財務長官は19日の米CNBCのインタビューで、インドがロシア産の安い原油を仕入れて第三国に転売することで「暴利を得ている」と批判した。
欧州の調査会社ケプラーによると、ロシアによるウクライナ侵略以降インドはロシアからの原油調達を急増させた。ベッセント氏は安く仕入れた原油の転売でインドが「160億ドル(2.3兆円)の超過利潤を得た」とみる。
米印の貿易協議は一時、日本や欧州連合(EU)より進んでいるとみられていたが、7月下旬にインド側が交渉団を引きあげて以降は交渉が停滞している。インドとの交渉を担当する米通商代表部(USTR)は、短期間で譲歩を引き出すのは難しいと判断している模様だ。
米国からの高関税に直面するインドやブラジルは、中国に接近し始めている。インドのモディ首相は8月31日に中国・天津で開幕する上海協力機構(SCO)首脳会議に出席する予定だ。7年ぶりの訪中となる。
モディ氏は6月にカナダで開いた主要7カ国首脳会議(G7サミット)にも出席したが、中東情勢対応のためサミットを切り上げて帰国したトランプ氏とは会えずじまいだった。
米国は追加関税発動後もインドとの関係を重視し、経済・軍事両面で結びつきを強めてつなぎとめを狙う。
米国務省は26日、米国とインドの両政府が25日に外務・防衛の高官によるオンライン協議をしたと発表した。貿易や投資、民生用の原子力協力を含むエネルギー安全保障などが議題になった。防衛協力も話し合い、2国間の協力を深化させる方針を確認した。
インドは日米豪と4カ国の協力枠組み「Quad(クアッド)」のメンバーでもある。米国とインドの間に距離ができれば、日本の安全保障戦略にも影響が出る恐れがある。