Nikkei Online, 2025年11月15日 12:01

【ワシントン=八十島綾平】トランプ米大統領は14日、220品目を超す食料品を対象に相互関税を撤廃するための大統領令に署名した。原産国を問わずコーヒーや牛肉、バナナなど多くの食料品に相互関税がかからないようにして、価格高騰に対処する。
米東部時間13日午前0時1分(日本時間同日午後2時1分)以降の輸入品に遡って適用する。日本も含めてすべての国が撤廃の対象となる。
トランプ氏は14日午後、記者団に「ほんの少し元に戻す(ロールバック)だけだ」と語り、自身の看板政策を大幅に後退させるわけではないと強調した。
米通商代表部(USTR)のグリア代表は14日の米CNBCのインタビューで、日本や欧州連合(EU)との関税交渉で「十分な合意が得られた」として「今こそ輸入製品への関税を一部撤廃する時だ」と説明した。

相互関税を撤廃した食料品のうち輸入額が大きい品目をみると、コーヒーや牛肉、アボカド、バナナ、トマト、パイナップル、オレンジジュースなどがある。いずれもスーパーの食料品売り場に並ぶ主要な野菜・果物類だ。
肉類では、価格上昇が顕著だった牛肉が相互関税の除外対象になった。牛肉は特に加工段階における市場寡占が問題となってきた。トランプ氏は11月に入り、加工業者による牛肉価格の操作がないか調査するよう米司法省反トラスト局に命じたばかりだった。

米消費者物価指数(CPI)の伸びは4月にトランプ米政権が相互関税を発動してから加速し、物価は高止まりしている。
4日投開票の3つの地方選挙で、生活費高騰への対策を訴えた民主党候補が全勝した。このこともトランプ政権が相互関税の見直しに踏み切った背景にあると報じる米メディアもある。
相互関税がかからない品目の数は拡大している。トランプ氏は9月に署名した大統領令で「米国内で栽培、採掘、生産できない製品や特定の農産品」などには、相互関税をかけないとの方針を表明済みだった。
同方針に基づき、医薬品や航空機部品、重要鉱物・エネルギーなどは相互関税の対象から外れている。今回新たに220品目超が加わり、例外品目は1300品目を超えた。
食料品の関税負担を和らげるよう求めていた全米商工会議所は14日、「大統領の行動は国民のコスト低減に役立つ」と撤廃を歓迎した。そのうえで除外対象の品目をさらに広げるよう訴えている。
相互関税を巡っては、米連邦最高裁が早ければ年内にも憲法違反かどうかを判断する見通しだ。最高裁の判断次第では、トランプ政権が関税政策の軸足を相互関税から分野別関税などに移す可能性もある。