Nikkei Online, 2026年2月21日 1:08更新

【ワシントン=八十島綾平】トランプ関税の合憲性が争われた訴訟で米連邦最高裁は20日、相互関税など一連の関税を課す権限はトランプ米大統領にはないとする判決を出した。米憲法では関税を課す権限を連邦議会に与えていることを重視した。政権は看板政策の修正を余儀なくされ、企業の事業戦略にも影響を与える可能性が高い。
判決は最高裁のロバーツ長官が書いた。既に徴収済みの関税を還付すべきかどうかについては明確に判断を示さなかった。9人の最高裁判事のうち6人が判決を支持し、カバノー判事ら3人が反対意見を出した。
一連の裁判は、米国内の中小企業や民主党系知事の州が原告となり、2025年春にトランプ政権を相手取って提訴した。一審と二審では原告側が勝訴し、政権側が上告した。
トランプ氏は国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、連邦議会の承認なく関税を発動した。裁判ではこの点が法の趣旨を超えた大統領権限の逸脱に当たるかどうかが争点になっていた。
最高裁は20日の判決で、IEEPAは「大統領に関税を課す権限を与えていない」と判示した。
25年11月5日に最高裁が開いた口頭弁論では、ロバーツ氏ら保守派の判事も「関税は議会の中核的な権限」などと指摘し、保守派・リベラル派を問わず各判事からトランプ関税への疑義が相次いだ。
IEEPAには「大統領は関税を発動できる」とは書かれていない。20日の判決文でロバーツ氏は、これまで最高裁は議会が「重大な結果をもたらす権限」を大統領に与える際には、法律にその旨を明記しなければならないという考え方を取ってきたと述べた。
そのうえでロバーツ氏は、この最高裁の考え方は、トランプ関税のように財政問題に関わるケースでは「特に強く適用される」と明言した。
ロバーツ氏はこれまでの審理でも、本来議会が権限を持つ関税を大統領権限で発動するには、あらかじめ議会が大統領に明示的に権限を委任するべきだとしていた。
米税関・国境取締局(CBP)の集計によると、今回違憲とされた関税について徴収済みの額は25年12月14日時点で1200億ドル(約19兆円)を超えている。このうち相互関税は817億ドルで最も大きく、中国に対するフェンタニル関税が378億ドルと続く。

トランプ政権は20日、法的根拠を別の法律に差し替えて同様の徴税を続ける方針を示した。
深刻な国際収支の赤字発生時に全輸入品に150日間限定で最大15%をかけられる「1974年通商法122条」を活用して、各国からの輸入品に対して10%の新たな関税をかける。
トランプ氏は発動時期について「今から3日後だ」と述べた。新たな10%関税を発動している5カ月間のうちに、今回の裁判の対象外だった分野別関税の対象品目拡大や、中国などに対する既存の制裁関税の深掘りを検討する。
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