インフレとの戦い転機、米利上げ終結へ 利下げ時期議論

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Nikkei Online, 2023年12月14日 13:00更新


FRBのパウエル議長は利下げ時期を議論したと明言した(13日)=ロイター

【ワシントン=高見浩輔】米欧のインフレとの戦いは転換点を迎えた。米連邦準備理事会(FRB)が2022年3月に始めた利上げは事実上終結し、最大の焦点は24年の利下げ時期に変わった。世界経済のリスクは新型コロナウイルス禍を契機とした高インフレから、これまでの利上げに伴う景気減速の度合いに重心を移しつつある。

13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に記者会見したパウエル議長は追加利上げではなく、利下げの時期を議論したと明言した。利上げは23年7月の会合が最後だったとみる市場の確信を裏付けた。

1年4カ月の利上げ期間は01年以降で最短で、計5.25%の利上げ幅は1980年代以降で最大となる。物価を熱しも冷やしもしない金利水準は2%程度に下がっており、今回はその倍を超える水準まで金融引き締めを実行したことになる。

パウエル議長はかねて金融引き締めを早期に緩めすぎて高インフレが定着した70年代の失敗を繰り返さないと強調してきた。13日の記者会見では対照的に「(高金利を)長引かせ過ぎることのリスクは気にしている」と景気に配慮する発言が目立った。

パウエル議長は会見で7〜9月期に5%程度の高成長となった米経済が大幅に減速しているとの見方を示した。米銀の融資は急減速しており、上位25行では11月下旬に前年割れ目前まで伸びが鈍った。個人のクレジットカード払いも延滞が増えている。

FOMC参加者は同日の経済見通しで24年に3回分の利下げを予想し、9月の前回見通しの2回から下げ幅を大きくした。消費者物価の前年同月比上昇率は40年半ぶりの記録を更新した22年6月の9.1%から23年11月は3.1%まで鈍化。インフレ抑制に自信を深めているためだ。

ただし米国の政策金利は22年ぶりの高さで強い引き締め水準にある。政策金利の誘導目標であるフェデラルファンド(FF)金利の上限は物価上昇率を11月時点で2.36ポイント上回っており、その差は2007年8月以来の大きさだ。利下げに転じてもすぐに金融緩和に移るわけではなく、引き締めの度合いが弱まる程度だ。

さらにパウエル議長は利下げを始めた後も当面は米国債の保有を減らす「量的引き締め(QT)」を続ける考えを明らかにしている。いまは国債と住宅ローン担保証券(MBS)を月間950億ドル(約13兆5000億円)を上限に減らしており、停止するには早い時期から減額が必要になる。

FRBが利下げの議論を始めたのは、こうした異例の引き締め政策からの転換に時間がかかることを見越しているためだ。

米利上げ局面の転換を受け、米金利先物市場では利下げ転換が24年3月の会合になるとの見方が前日の4割から8割に急上昇した。金融政策の動向を映す米2年債利回りは会合直前の4.67%から4.34%に低下。米ダウ工業株30種平均は史上最高値を更新し、外国為替市場では円高・ドル安が進んだ。

日本時間の14日夜に理事会を開く欧州中央銀行(ECB)も2会合連続で政策金利を据え置き、22年7月から続けてきた利上げの効果を慎重に見極める構えだ。

米欧の利上げ終結は長期緩和からの出口を探る日銀の判断にも響く。日銀は物価と賃金上昇の好循環が確認できればマイナス金利政策を解除する方針だが、米欧が利下げに転じれば、企業収益を押し上げてきた円安相場の変調は避けられない。独自の戦いを続けてきた日銀は、米欧中銀の動向も踏まえた判断を迫られることになる。


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