Nikkei Online, 2025年11月8日 7:53

【ワシントン=飛田臨太郎】ヘグセス米国防長官は7日、米防衛産業の幹部を集めて演説し「戦時の防衛産業への転換」を求めた。国防総省も組織改革を始めると表明し、官民一体で産業基盤の強化を目指す。遅れが目立つ同盟国への武器輸出を巡り、納期を守れるようにすると言及した。
産業界に「防衛大手は変革を迫られている。スピードアップと量産に注力すべきだ」と要請した。企業が動かなければ「大統領に付与された数多くの権限を最大限に活用する用意がある。安全保障が最優先だ」と圧力をかけた。
「あらゆる企業が防衛産業基盤に加わるのを望む」とも触れた。
国防総省は企業のビジネス環境を安定させるため、大規模な長期契約を進めると説明した。企業と取引する際に、時間と手間がかかる国防総省の承認プロセスを大胆に見直すと表明した。
会計の基準や審査などの規制を大幅に排除すると説いた。「現場のアイデアを葬るような、書類を作るためだけの文化は断絶するよう指示した」と述べた。国防総省の「縦割り組織」を打破するため、組織の統廃合を始める。
トランプ米大統領は日本を含む同盟国に米国産の武器を購入するよう迫ってきた。ヘグセス氏は「トランプ氏のおかげで、米国の対外軍事販売は史上最高水準に達した」と説明した。一方で「産業基盤が非効率すぎて、納期を守れていない」と指摘した。
各国の首脳や国防相との会談で「どんな問題を抱えているのか」と毎回聞かれると明かした。「同盟国が必要な時に必要な能力を受け取れるように、保証できるようにしよう」と呼びかけた。
トランプ政権が同盟国に国防費の増額を要求することで、中国などへの抑止力の強化をはかっている国防方針に触れた。「同盟国が米国と相互運用性のある優れた兵器を装備することで、危険な世界的な課題にたちむかえる」と理解を求めた。
中国やロシアを念頭に「敵対勢力は手をこまねいてはいない。新しい能力を開発・展開するスピードは米国に警鐘をならすほどだ」と語った。「戦争の勝敗は、戦場の戦士だけでなく、戦争が始まる何年も前からの(武器の)調達や産業によって決まる」と言及した。
冒頭で、2001年9月10日のラムズフェルド国防長官(当時)の演説を引用した。ラムズフェルド氏は「我々の真の敵対者は国防総省の官僚機構だ」と語った。
ヘグセス氏は非効率な官僚機構の体質は四半世紀たっても解決できていないと唱え、トランプ氏から「戦時の思考を採用し、非効率な官僚機構に立ち向かうよう指示を受けた」と明かした。