Source: Nikkei Online, 2023年11月20日
【ブエノスアイレス=宮本英威】南米アルゼンチンで19日、大統領選の決選投票が行われた。野党で右派のハビエル・ミレイ下院議員(53)が勝利した。年率140%を上回る高インフレの経済苦境に対して、経済のドル化や中央銀行の廃止といった過激な抜本改革を訴えたミレイ氏に支持が集まった。
選管当局による結果公表前に、対抗馬だった反米左派の与党連合から出馬したセルヒオ・マサ経済相(51)が演説で敗北を認めた。選管当局(開票率約95%)によると、ミレイ氏の得票率は55.78%、マサ氏は44.21%だった。
ミレイ氏は19日の投票後に「あしたにはより多くの希望が生まれる。崩壊への終止符を願おう」と述べていた。
大統領選は変化を訴えるミレイ氏と、現政権の路線継続を主張するマサ氏の対決だった。自由至上主義者(リバタリアン)のミレイ氏は小さな政府を主張して、歳出の大幅削減や省庁の統廃合を訴えてきた。マサ氏は低所得者層への補助金重視などを訴えたが及ばなかった。
アルゼンチンは干ばつや通貨安でインフレが加速している。10月の消費者物価指数は、前年同月比142.7%上昇した。1991年8月(144.4%)以来、約32年ぶりの大きな上昇率だった。9カ月連続で年100%を上回っている。国民の4割が貧困層とされる。
今回の大統領選は現職のアルベルト・フェルナンデス氏の任期満了に伴い行われた。同氏は世論調査で不人気で、与党連合内でも支持が広がらず再選を目指す出馬を断念した。
10月の1回目の投票では勝利の条件を満たす候補者がおらず、上位2候補がこの日の決選投票に進んだ。次期大統領は12月10日に就任する。任期は4年。
アルゼンチンの人口は南米3位の約4600万人。石油や天然ガス、リチウムといった天然資源、大豆やトウモロコシなどの農地を豊富に抱える。世界銀行によると、1人当たり国内総生産(GDP)は1万3686ドル(2022年)。