Source: Nikkei Online, 2024年8月17日 3:57
【ロンドン=赤川省吾】ドイツはフリゲート艦と補給艦で構成する艦隊を日本近海に展開する。8月下旬に東京に寄港する。艦隊を率いるドイツ海軍のシュルツ准将は取材に応じ、日米などと共同演習に臨むことを明らかにした。「国際秩序の維持に貢献する」とも語った。ドイツでも中国の軍事的台頭への警戒感が広がる。
ドイツは海外領土を持たず、安全保障政策においてアジアは伝統的な関心領域ではない。にもかかわらず、長期活動ができるようにフリゲート艦と補給艦で構成される主力部隊を太平洋に送った。
同艦隊は大西洋からパナマ運河を通過し、ハワイに寄港。いまは東京に向かっている。ドイツは2021年にもフリゲート艦を太平洋に送っており、今回は規模を大幅に拡大した。同時期にドイツ空軍も太平洋に展開している。
「(インド太平洋地域で)紛争が起きれば輸出立国のドイツに大きな影響が及ぶ」とシュルツ海軍准将は語った。地域の安定が「自由な世界貿易とグローバルなサプライチェーン(供給網)の維持」のために必要だという。
日本、韓国、フィリピン、インドネシア、シンガポールを列挙し、安全保障面を含めて「緊密で戦略的なパートナーとの関係を強化する」とも述べた。「単なるリップサービスではない」と強調し、「現地に赴いて連帯を示す」と発言した。
ドイツ艦隊は日本に寄港後、日米などと共同演習を行う。フランスやイタリアも参加し、日米欧が日本近海で連携を示す形になる。ドイツ艦隊は韓国やインドなどにも立ち寄り、欧州に戻る見通しだ。
中国の軍事的な台頭をけん制する狙いがあるのは明らかだ。シュルツ氏は「特定の国を標的にしているわけではないということを明確にしたい」と訴える一方、「ルールに基づく国際秩序の順守を提唱したい」と話した。
ドイツ政府は20年に「インド太平洋ガイドライン」を閣議決定し、中国偏重と批判されてきたアジア外交を転換した。いまは経済の中国依存を減らすデリスキング(リスク軽減)を志向する。
今回の艦隊派遣についても数年前から準備していた。シュタインマイヤー独大統領は22年、日本経済新聞の取材に「ドイツ軍がインド太平洋地域に関与することを歓迎する」と答えている。ただ中国を過度に刺激するのは避けており、シュルツ氏も台湾有事についてはコメントしなかった。