Source: Nikkei Online,2025年1月7日 17:33
【シンガポール=佐藤史佳】マレーシアのアンワル首相とシンガポールのローレンス・ウォン首相は7日、国境を接するマレーシアのジョホール州南部に経済特区を設けることで最終合意した。税制優遇などで雇用創出や海外企業の誘致を狙う。
両国は「ジョホール・シンガポール経済特区」としておよそ3600平方キロメートルの地域を指定した。主要都市ジョホールバル、データセンター投資が盛んなイスカンダル・プテリ、マレーシア政府が金融特区に指定したフォレストシティーなどの地区を含む。
両政府は経済特区について2023年から実現に向けて議論を始め、24年1月に覚書を締結していた。最終合意を結んだことで、今後は稼働時期を含めて詳細を詰める。
新たに同地域に投資する企業の法人税や個人の所得税に条件付きで優遇税率を適用する。補助金の支給や規制緩和を予定する。ビザの要件緩和も検討する。
世界の経済特区は中国の深圳など多数の国に例があるが、2つの国が共同で特区を開発するのは珍しい。今回の経済特区はマレーシアの中にあるが、隣接するシンガポールも自国への経済的な恩恵を期待する。
ウォン氏は7日の記者会見で「経済特区は両国の競争力を高め、海外からの投資を呼び込むことができるだろう」と述べた。シンガポール企業が特区に進出するだけでなく、海外からの両国への投資が増えることにも期待を示した。
アンワル氏は「経済特区を通じて2国間の関係を強化したい」と述べた。
経済特区を新たなビジネス機会と捉える企業は少なくない。シンガポール大手銀のオーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)は特区で事業拡大を考える顧客の資金調達を支援するため、新たに25人のチームをつくった。
米エヌビディアがマレーシア企業YTLパワー・インターナショナルと開発を進めるデータセンターもジョホール州にある。
ウォン氏とアンワル氏は会談で、教育や脱炭素分野などで協力することにも合意した。
マレーシアは25年の東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国を務める。ウォン氏は「マレーシアの議長国就任を全面的に支持する」とし、ASEANの団結のために協力する考えを述べた。
ウォン氏がマレーシアを訪問するのは24年5月の首相就任以来、2回目。当初は24年12月に訪問予定だったが、ウォン氏が新型コロナウイルスに感染したため延期していた。