Source: Nikkei Online, 2025年6月7日 5:37更新
【ウィーン=金子夏樹】ロシア軍は6日、ウクライナ全土への大規模な空爆を実施した。ウクライナ当局によると、首都キーウで少なくとも3人が死亡した。ロシアはおよそ400機の無人機(ドローン)と40発以上のミサイルを使用したという。
ロシア国防省は6日、ウクライナによるロシア国内の空軍基地への大規模攻撃に対する「報復」として、無人機や長距離ミサイルでウクライナの軍事施設を攻撃したとSNSで発表した。「目的は達成され、すべての目標が破壊された」と主張した。
ロシアのプーチン大統領は4日のトランプ米大統領との電話協議で、ウクライナへの「反撃」を明言していた。
ウクライナのゼレンスキー大統領は攻撃を受けてX(旧ツイッター)に投稿し「我々は断固たる行動をとらなければならない」と米欧にロシアへの圧力強化を訴えた。
ウクライナはロシア国内での破壊活動といった攻撃を強めている。ロシアはウクライナによる「テロ」だと反発し、5月から始めた直接交渉の先行きに不透明感が高まっている。
プーチン氏は4日、政府の会合でウクライナについて「誰がテロリストと交渉するというのか」と指摘。ウクライナが求める無条件停戦やゼレンスキー氏との首脳会談の開催に否定的な見解をにじませた。
ロシアは無人機を使ったウクライナへの攻撃を強めつつあり、今後も報復行為の名目で攻撃を正当化し、ウクライナの各地に空爆を続けるとみられる。
ロシア軍はウクライナで5月26日にかけて3日連続で無人機とミサイルによる大規模な攻撃をしかけた。ゼレンスキー氏は「3日間で900機を超える無人機攻撃があった」と無人機攻撃への警戒感を強めていた。
ロシアは自国内での無人機生産を拡大しているもようだ。プーチン氏は4月の軍事関連の会合で「2024年にロシア軍には150万機以上の様々な種類の無人機が供給された」と述べた。
ロシア軍は無人機による首都キーウなどへの遠距離攻撃に加えて、ウクライナ北東部スムイ州や22年秋に一方的に併合したウクライナ東・南部4州(ドネツク、ルハンスク、ヘルソン、ザポリージャ)などでも制圧地域を拡大している。ウクライナとの直接交渉で「時間稼ぎ」を続けつつ、自国に優位な状況をつくろうとしている。
ロシア国防省は6月3日にスムイ州の集落であるアンドリーウカを制圧したと発表、州都スムイに迫りつつある。プーチン氏は5月、ロシア西部州とウクライナの国境沿いに「緩衝地帯」を設置すると述べた。ウクライナが越境攻撃を仕掛けたロシア西部クルスク州と国境を接するスムイ州で攻勢をかけ、防衛目的と称した侵略行為を続けている。
ロシアの軍事専門家からは、ロシア軍が夏にかけてドネツク州全域の制圧を目指す可能性があるとの指摘も出ている。