米軍、対イラン「ミッドナイト・ハンマー作戦」成功主張
 検証に時間

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Source: Nikkei Online, 2025年6月23日 6:16更新

奇襲に使ったステルス爆撃機B2㊥=ロイター

【ワシントン=飛田臨太郎】米国防総省は22日、イランに対し実施した軍事作戦の詳細を説明した。核施設のみを標的に、イラン軍の目立った反撃を受けず真夜中に実行した。「ミッドナイト・ハンマー(真夜中の鉄つい)」と名付けた作戦は数カ月前から極秘で練っていたという。成果の評価は割れており検証には時間がかかりそうだ。

ヘグセス国防長官と米軍制服組トップのケイン統合参謀本部議長が記者会見を開いた。3カ所のイランの核施設への攻撃はイラン時間で22日午前2時10分ごろの深夜から始めたと明かした。

2日前の19日にトランプ米大統領は攻撃するか否かは「2週間以内」に決めると表明していた。イラン側の不意を突いたような奇襲攻撃となった。「ワシントンで、この計画の内容やタイミングを知っているのは極めてごく少数の人数に限られた」とケイン氏は話した。

米ニュースサイトのアクシオスによると、米国は軍事作戦を19日にイスラエルのネタニヤフ首相にバンス副大統領を通じて極秘裏に伝えた。世界が「2週間以内の対話」に期待したその日に作戦が動き出していたことになる。

爆撃に使用したステルス爆撃機のB2はレーダーに映りにくく「スピリット(霊)」とも呼ばれる。

B2は中西部ミズーリ州のホワイトマン空軍基地を飛び立つと大西洋からイランに向かった。外部との通信は最小限にとどめ、空中で複数回の給油を受けて18時間かけて到着した。

米史上最大のB2を使った攻撃作戦で、ヘグセス氏は「世界が気づかないうちに(米国とイランを)往復した」と誇った。太平洋側には攻撃に使ったのとは別のおとりのB2を飛行させた。米メディアにこの情報をあえて漏らしたとみられ、報道が相次いだ。

地中深くまで潜り込んで対象を爆発させる大型の地下貫通弾(バンカーバスター)は14発使った。一連の作戦には、精密誘導兵器をおよそ75発、B2を含めた軍用航空機は125機以上が関わった。

トランプ政権の幹部は、軍事作戦をあくまで今回の空爆のみにとどめたいとの思いをにじませる。

ヘグセス氏は「大統領の指示は無制限ではなく、イランの核能力の破壊に焦点を絞った」「(攻撃の目的は)大統領は核だとイランに明確に伝え、ここに一線を引いた」と強調した。

ルビオ国務長官も22日「目的は達成した。現時点でイランに対して計画している軍事作戦はない」と語った。「イランが米国を攻撃した場合を除く」と加え、報復攻撃がなければ米軍の行動は終わりにできると自信をみせた。

今後の焦点はトランプ政権が主張するとおり、本当に作戦が成功したかどうかになる。

核兵器を開発するために使う施設・技術の破壊に失敗していた場合、イランが抑止を目的に核武装を急ぐリスクは高まる。米側がそれを防ぐために再び攻撃を加えるという、いたちごっこになりかねない。

トランプ氏は攻撃直後の21日の演説で「完全に破壊した」と唱えた。一方、ケイン氏は22日、初期段階の評価として、3カ所の核施設をいずれも「極めて激しく」破壊できたと説明した。

イラン側は限定的だと否定している。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は米国とイスラエルの当局者がイラン中部フォルドゥの地下核施設は完全な破壊に至らなかったとの見方を示したと報じた。

米欧の複数メディアが衛星画像を使いフォルドゥの現状などを分析し、6カ所の穴が確認されたなどとしている。ただし、現時点では、米軍の攻撃がどこまで成果が上げたかを正確に把握するのは難しい。ケイン氏も「最終的な戦闘被害の評価には時間がかかる」と認めた。

第1次トランプ政権で国防総省高官だったミック・マルロイ氏はNYTに「使用された爆弾の種類と量から考えると、核兵器開発は2〜5年遅れる可能性がある。数日かけて評価し、正確な判断をするだろう」と話した。

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