ラグビー日本代表、薄氷も大きな勝利 斎藤とレメキ躍動

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Nikkei Online, 2023年9月29日 9:29

ラグビーW杯フランス大会の1次リーグでサモアに勝利しタッチを交わす日本代表
(28日、トゥールーズ)=共同

後半40分を過ぎ、サモアのラインアウトが乱れたところでボールを奪ってタッチに蹴り出す。あわや逆転のピンチを切り抜け6点差の勝利を収めた日本の面々は、心底胸をなで下ろしたような表情だった。

今大会3戦目で初めて先制点を奪った。前半13分、スクラムからボールを出すと、勢いよく真っすぐ走り込んできた選手をおとりに、外側で数的優位にあるFBレメキにつないで大きくゲインした。一度倒されたレメキはすぐに立ち上がってさらに前進。最後はラックからボールを受けたフランカーのラブスカフニがトライを奪った。 

互いに1本ずつPGを取り合った後の同32分の得点もスクラムからだった。ボールを持ったSH斎藤がFWと突っ込んで相手選手3人を引き付けた上で、右に展開。キックに備えて後方に控えるサモアの選手が上がらないこともあってできた外のスペースを突き、敵陣22メートルライン内側に入った。左に折り返すとWTB松島が縦に突っ込み、相手選手を集めてできたラックからさらに左を攻め、飛ばしパスからフランカーのリーチが大外でトライを取った。

前半、トライを決めるリーチ=共同

守備ではサモアの単線的なアタックを、前に出ながらのタックルでストップ。WTBナイカブラとCTB中村が同時にタックルにいく際は、1人が膝、1人がボールに絡みにいくダブルタックルではなく、2人ともボールキャリアーの腹付近へ。接点で直ちに止める意思が凝縮されたものだった。

相手の角度を変えた真後ろへのパスに対しても、一人ひとりが誰をマークするかが明確な日本の守備ラインは多くの時間帯で乱れることがなかった。

今大会初先発の2人の活躍が光った試合でもあった。当初先発メンバーに登録されながら、コンディション調整を理由に前日練習に参加していなかったSH流が欠場。代わってスタートから出た斎藤は的確なキックで着実にエリアを獲得していった。サモアの捕球の精度が低いこともあり、しばしばハイボールを蹴り日本の優勢につなげた。パスダミーで相手の反則を誘った場面からは、視野の広さとともに冷静さもうかがえた。

パスを出す斎藤(中央)。視野の広さや冷静さが光った=ゲッティ共同

同じく初先発したレメキも躍動した。前回大会のサモア戦でプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)に輝いている縁起の良さもあってか、ボールキャリーは両チームを通じてトップの135メートルをマーク。タックルにきた選手をはじき飛ばしてさらに前進するさまはFWのようでもあり、攻守にわたる活躍で再びPOMに選ばれた。

後半にナンバー8姫野のトライなどで25-8とリードを広げたが、体力の消耗との闘いでもある最後の20分間でサモアの強力FWに押され、2トライを奪われた。後半7分にサモアのWTBのB・ラムが危険なプレーでイエローカードを受け、後にレッドカードに。日本はほとんどの時間を1人多い状況で進めたにもかかわらず、後半のスコアは11-14だった。このあたりは次戦のアルゼンチン戦への課題になるだろう。姫野は「うまくできた部分もあったし、後半やられてしまった部分もあった。次はそういうムラをなくしていけたら」と気を引き締める。

攻め込むレメキ(右)。ボールキャリーで両チームを通じトップの数字を出すなど攻守に活躍した=共同

2大会連続の決勝トーナメント進出へ大きな1勝をものにした。所属先の東京SGの先輩でもある流から「勝たせてこい」と背中を押されたという斎藤は「大(ゆたか)さん(流)の分も背負ってプレーする」と心に決め、立派に大役を果たした。「誰が出ても遜色ないプレーができる」とSO松田が自負する日本。再びの8強入りを懸け、いよいよ大一番を迎える。