花粉飛散、23年は過去10年で最多の恐れ 関東など注意

花粉症外来を設ける銀座しまだ内科クリニックには例年より2週間ほど早く
花粉症患者が訪れた(1月、東京都中央区)

本格的な花粉症のシーズンが近づく中、2023年は関東や近畿など各地で過去10年で飛散量が最も多くなる恐れがある。国内の花粉症患者は約20年で2倍超に増えたと推計され、若い世代の増加が目立つ。鼻水や喉の痛みなど症状の一部は新型コロナウイルスと似ており、専門家は「心配なときは早めに医療機関に相談を」と呼びかけている。

「鼻水が止まらない」。銀座しまだ内科クリニック(東京・中央)では1月上旬から1日数人の花粉症患者が訪れるようになった。例年、日本列島は2月中旬ごろから花粉シーズンが本格化するが、院長の島田昌彦医師は「今年は2週間ほど早かった」と話す。

花粉症患者の大半はスギ花粉が原因とされる。スギ花粉の飛散量の多さは、花粉を生産する雄花の発芽数を示す着花量に左右される。環境省が2022年11〜12月に調査した着花量は関東、北陸、近畿、中国などの地方で過去10年間の最大値を超えており、「花粉飛散は極めて多くなる」としている。

都道府県別の着花量は、東京や神奈川、京都、兵庫などで過去10年間で最も多かった。

関東ではヒノキの雄花も極めて多く、花粉症の人にはつらいシーズンになる予想だ。昨夏の日照時間が長く、雄花の着花量が多くなったとみられる。

天気予報サービス「ウェザーニュース」が1月17〜18日にかけて同社のアプリ利用者に実施した調査(対象6957人)では、花粉の飛散を「ちょっと感じる」「けっこう感じる」と答えた割合は32.8%に達した。関東が最も多く、甲信と東海も目立つ。

花粉症患者は増加している。日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会などが全国の耳鼻咽喉科医とその家族約2万人を対象に実施した鼻アレルギーの全国疫学調査によると、2019年のスギ花粉症の有症率は38.8%と、データの遡れる1998年の16.2%から2倍超となった。

年代別では10代や20代の増加が著しい。10代の有症率は98年の19.7%から19年には49.5%と約20年間で約2.5倍に増えた。20代も18.7%から47.5%になった。

花粉症に詳しい日本医科大大学院の大久保公裕教授は若い世代で患者が増えている背景について「外で遊ぶことが減り細菌に触れる機会が少なくなり、免疫反応が花粉に向かいやすくなった」と分析する。

鼻水などの症状は新型コロナでも表れるため見極めが難しい。島田医師の医院では発熱、味覚・嗅覚障害、関節痛の有無などで判別しているという。「のどの違和感」や「さらさらとした鼻汁が止まらない」など、症状で見分けがつかない場合にはPCR検査や発熱外来の受診が望ましい。

島田医師は「花粉の飛散量が多いとこれまで花粉症でなかった人が発症するリスクも高まる」と指摘。「マスクやアイガードを着用したり、服に付いた花粉を取り込まないよう着替えを頻繁にしたりして対策を取ってほしい」と話す。

 


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