Google Pixel、スマホ国内2位に浮上
安さでiPhone追う

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Source: Nikkei Online, 2023年6月17日 2:00

グーグルは自社製スマートフォンの販売に力を入れる

米グーグルのスマートフォン「Pixel(ピクセル)」が存在感を高めている。独自機能や割安感が受け、5月単月の国内シェアは米アップルに次ぐ2位だった。国内スマホ市場で縮小と淘汰が進む中、基本ソフト(OS)を手掛ける米2強が争う構図が強まる。

「(グーグルのOSを載せた)アンドロイド端末を使うのは初めて。写真編集機能や手ごろな価格が気になっていた」。横浜市の50代の男性会社員は5月中旬、ビックカメラ有楽町店(東京・千代田)でグーグルの新型スマホ「ピクセル7a」を購入した。

決め手は価格だ。5月11日に発売したピクセル7aは直販価格が6万2700円からと、22年10月発売の「ピクセル7」より約2万円安い。愛用していたアップルの「iPhone」で、最新機種の価格が2022年に10万円を超えたことも乗り換えを後押しした。

グーグルの「7a」は自社開発した半導体を搭載し、人工知能(AI)を使って撮影後に写真のピントを修正するなど上位機種と同様の最新機能が使える。ビックカメラ有楽町店の販売担当者は「販売は好調。通信会社の乗り換え割引で買う人が多い」と話す。


家電量販店やネット通販の販売データを扱う調査会社BCN(東京・千代田)によると、スマホの5月の販売シェアはグーグルが13.3%と、前月から6ポイント上昇して過去最高だった。51.8%と圧倒的なシェアを握るアップルに次ぐ2番手だった。「7a」からNTTドコモがグーグル製スマホの取り扱いを再開した効果もあったようだ。

グーグルがピクセルの国内販売を始めたのは18年。シェアはしばらく1〜2%台だったが、22年夏ごろから上昇し始めた。22年10月から6カ月続けて全体の2位となり、23年は1〜5月の平均で9.6%と前年同期の5倍に高まった。シャープやソニー、韓国サムスン電子といった他のアンドロイド勢を上回っている。

BCNの森英二アナリストによると「年明け以降はピクセルが通信会社の値引き対象機種になる例が増えた」という。グーグルの競争力について「OSや半導体に加え、アプリも多く自社で手掛けており、今後も優位を保てる」と分析する。

グーグルは自社サイトを通じた販売も強化している。「7a」発売直後は他社製の中古品も高額で下取りするキャンペーンを展開した。購入者には動画配信「ユーチューブ」の有料会員の特典を一定期間与えるなど、自社のネットサービスも活用する。

今後のピクセルブランドの成長の鍵を握るのが、スマホ以外の端末への横展開だ。22年10月に発売したスマートウオッチ「ピクセルウオッチ」に続き、20日にはタブレット端末、7月には折り畳み式スマホを発売する。スマホを起点に消費者の周辺機器需要の取り込みを狙う。


ただ、ここでも行く手に立ちはだかるのがアップルだ。調査会社のMM総研(東京・港)によるとアップルの国内シェアはタブレットが約50%、スマートウオッチは約60%に達する。iPhoneとの機能連携を強みに、周辺機器市場でも支配力を保っている。

アップルの「独り勝ち」が続く中、アンドロイド中心の国内メーカーには新たな淘汰の波が押し寄せている。5月中旬にはバルミューダ京セラが相次いで撤退や事業縮小を決めた。下旬には「らくらくホン」を手がけるFCNTが民事再生法の適用を申請して経営破綻した。

アンドロイドの利用者が減ると、その分グーグルのサービスに接する機会も減りやすい。ゲームなど課金時に手数料が得られるアプリ配信事業や、クラウドサービス、検索広告といった幅広い事業で負の影響が出かねない。OSを通じた利用者との接点を確保するため、端末でもグーグル自身が先頭に立ってアップルに対抗している状況だ。

スマホ市場の成熟に伴って消費者の買い替えサイクルは長期化している。MM総研によると22年度の国内出荷台数は12%減の2985万台と3年ぶりに3000万台の大台を下回った。総務省は「1円スマホ」などの安売りを防ぐため、5月末に新たな値引き制限案を公表した。消費者の買い替え需要がさらに冷え込む可能性がある。

(伴正春、前田悠太)

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