ニコンやソニー、
「AI偽画像」防ぐカメラ 電子署名で

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Source: Nikkei Online, 2023年12月29日 17:14

ソニーはカメラで撮影した画像にデジタル署名を付ける技術を導入する

ニコンソニーグループはフェイク画像を防ぐカメラ技術を実用化する。画像に撮影場所や撮影者、編集履歴などの情報を埋め込み、デジタル署名技術で画像の信頼性を確保する。生成AI(人工知能)で作った本物との見分けが難しい「ディープフェイク」が氾濫している。世界カメラ市場でシェア9割超を握る国内勢が情報インフラの安全確保に動く。

ニコンは撮影画像が本物だと証明できる新型ミラーレスカメラを投入する。報道カメラマンなどプロ向け機種に技術を載せる方針だ。写真撮影時の日時や位置情報、撮影者などの属性情報を改ざんされにくいデジタル署名として付与する。

専用サイト上で無料の画像チェック

欧米の報道機関やIT(情報技術)企業、カメラメーカーなどが参加する業界団体ではディープフェイク画像の対策を講じている。個人がインターネット上にある画像が本物かを確認したい場合、この業界団体が設けた「ベリファイ」という専用のウェブサイトを無料で使える。

画像をサイトに上げると、対応するカメラで撮影したデジタル署名入りの画像であれば撮影場所や撮影者といった情報を見られる。このデジタル署名は世界的な標準規格になっており、ニコンやソニー、キヤノンも使う。AI製や改ざん画像であれば「コンテンツ認証情報なし」と表示され、見分けることができる。


ソニーは24年春から「デジタル署名」技術を導入

ソニーグループ傘下のソニーは、24年春からプロ向けミラーレス一眼カメラ3機種にデジタル署名を付ける技術を導入する。利用者に専用ソフトウエアを配布し、機能を拡張してもらう。動画対応も検討する。

カメラマンが撮影画像を報道機関に送ると、ソニーの検証サーバーでデジタル署名を検出し、AI製の画像かどうかが分かる。23年10月にはAP通信と記事に使う画像の信頼性を確保する実証実験を行った。対応機種を増やし、世界の報道機関に導入を促す。

キヤノンも早ければ24年に同様のカメラを発売する。さらに動画にもデジタル署名を入れるため技術を開発中だ。19年に社内でプロジェクトチームを立ち上げた。ロイター通信やスタンフォード大学などに拠点を置く研究機関と協業するなど開発を進めていた。専用の画像管理アプリも投入し、人間が撮影した画像だと分かるようにする。

キヤノンは画像に撮影日時や位置情報といったデータをデジタル署名で付与し、
専用アプリ上で信頼性を確認できるようにする(アプリのイメージ)

「1日に約70万枚」AIを使った偽画像が拡散

生成AIによる画像の乱造リスクは高まっている。23年10月に中国・清華大学の学生らが中心となって発表した「レイテント・コンシステンシー・モデル(拡散的一貫性モデル)」と呼ばれる最新の画像生成AIの技術では1日に約70万枚の画像をAIが作り出せると分析した。

実際には存在しないが本物との判別が難しいディープフェイクへの懸念も強まる。23年春にはトランプ前米大統領が逮捕される様子が拡散された。日本でも岸田文雄首相のニュース映像をもとに作られたフェイク動画が問題となった。

各国政府や国際機関はAI利用に制限をかけ、法律などで規制する。米バイデン政権は7月、米マイクロソフトや米グーグルなどAI開発を主導するIT7社と企業側が開発段階で自主規制ルールを導入することに合意した。10月にはAIの安全性の確保や技術革新を図る大統領令を発令した。

ネットや半導体、IT企業も偽画像対策を急ぐ。米グーグルは8月にAI製の画像に肉眼で見えない「電子透かし」を入れてAI製と認識できる技術を公開した。米インテルは22年に人物の皮膚の色の変化から血流を読み取り、真贋(しんがん)を見極める技術を開発した。日立製作所はオンラインの本人認証向けにフェイク対策技術を開発中だ。

偽画像や情報対策が広がるなか、今後はプロだけでなく個人も撮影した画像や動画をSNS(交流サイト)に上げる際などに本物と証明することを求められる時代に変わっていく可能性がある。

(為広剛、古川慶一、広井洋一郎)

Reference Topic: => Link(詐欺師の正体は生成AI)


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